民族教育は正当な権利

国連の各人権条約審査機関 相次ぐ勧告


 本紙既報のように、労働、社会保障、生活水準、健康、教育などに関する権利保障を定めた「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約(社会権規約)」の日本での順守状況を審査した国連・社会権規約委員会が8月31日、朝鮮学校を正式に認可して財政補助とその卒業による大学入学資格を与えるよう勧告した。国連の条約審査機関が、日本政府に民族教育・朝鮮学校差別是正を勧告するのは、子どもの権利委員会、自由権規約委員会、人種差別撤廃委員会に続いて4回目。国際的な人権基準において、民族教育の権利を主張する在日同胞の主張が正しいことが繰り返し明らかになっている。

定期的にチェック

 「すべての人民とすべての国が達成すべき共通の基準」として国連が世界人権宣言を採択したのは1948年12月。以来、国連は同宣言の内容を条約化した国際人権規約をはじめ各分野別の国際人権条約を制定し、世界的な人権状況の改善に努めてきた。

 日本政府は51年、世界人権宣言の目的実現のために努力する意思を表明し、79年には国際人権規約(「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約=社会権規約」「市民的及び政治的権利に関する国際規約=自由権規約」)を批准した。また、各分野別の国際人権条約においても、94年には子どもの権利条約、95年には人種差別撤廃条約の締約国になっている。

 国連には、これらの規約、条約を締約国が守っているかどうか、チェックするための条約審査機関(委員会)がある。これらの委員会は、締約国が数年(条約により異なるが2〜5年)ごとに提出を義務づけられている報告書をもとに締約国政府代表と議論しながら審査。その結果をまとめた文書を採択し、懸念事項について改善を勧告する。

朝鮮学校差別撤廃を

 98年6月、日本政府の「子どもの権利条約」の順守状況に関する初の審査を行った国連・子どもの権利委員会は、朝鮮人を含むマイノリティーの子どもへの差別的な取り扱いについて全面的に調査し、解消するよう勧告した。

 委員会は、朝鮮人を含むマイノリティーの子どもとの関わりにおいて条約第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第12条(子どもの意見の尊重)の一般原則が立法政策・計画に統合されていないことへの懸念を表明。とくに「朝鮮人の子どもに影響を与えている高等教育機関への進出の不平等」(大学受験資格問題を指す)に対する懸念を強調したうえで、朝鮮人などの子どもへの差別について全面的に調査、解消するよう勧告した。

 また同年11月、日本における自由権規約の順守状況に関して4回目の審査を行った国連・自由権規約委員会は、朝鮮学校差別を含む在日朝鮮人への差別の事実に対する懸念などを表明したうえで、日本政府がこれらのコメントにもとづいた政策を立て、人権侵害の被害者に対して救済措置を取るよう勧告した。

 さらに今年3月、人種差別撤廃条約の日本における順守状況を初めて審査した国連・人種差別撤廃委員会は、朝鮮学校卒業生の大学受験資格差別問題、朝鮮学校などで在日同胞の子どもたちが朝鮮語で教育を受ける権利が承認されていないことへの懸念を表明し、こうした差別的取り扱いを撤廃するよう勧告した。

 同委員会はまた、「朝鮮語による学習が承認されていないこと、および在日コリアンの生徒が高等教育の機会に関して不平等な取り扱いを受けていることに懸念を表明」し、日本政府に対して、「この点における在日同胞を含むマイノリティーの差別的取り扱いを撤廃」するよう勧告した。この「朝鮮語による学習が承認されていないこと」には、朝鮮学校が正規の学校として認められていないことも当然含まれる。

通じない言い分

 各委員会に提出した報告書や審査の場における日本政府の主張は、「差別ではない」の一点張りだ。在日外国人であっても希望すれば日本の学校に受け入れているとしながら、外国人学校はスタンダードが違うので普通の学校と同じように処遇することはできないなどと、強弁し続けている。

 しかし、各委員会はこうした日本政府の欺まん性を見抜いてその見解を真っ向から否定し、民族教育の権利は保障されるべきだという共通認識を示している。さらに、回を重ねるごとに民族教育の置かれた状況に対する勧告のトーンも徐々に強まっている。社会権規約委員会は先月、朝鮮学校を正式に認可して財政補助と大学受験資格を与えるよう勧告したが、財政補助にまで言及し、ここまで総合的かつ明快に勧告したのは初めてだ。総聯代表らが国連の場で地道な訴えを続けてきた成果だと言える。

 国連の審査の場で言わば連戦連敗の日本政府。在日同胞の民族教育は、日本政府自らが保障してしかるべき正当な権利だという認識こそが国際的なスタンダードなのであり、それに従うのは条約締約国の義務だ。日本政府は1日も早く朝鮮学校に対する差別是正に取り組まなくてはならない。(韓東賢記者)

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