ロボフェスタ出場まで

アイデアから組み立てまですべて自分たちの手で

モノ作りの楽しさ知る


 「ロボフェスタ神奈川2001」の公認競技として、8月30日に行われた「ロボットグランプリ・スカベンジャー競技」に出場した、初級部1年生から高級部2年生までの神奈川朝鮮初中高級学校の生徒と教員22人。ロボットはすべて自作。キット(材料一式)は競技の1ヵ月前に主催者から送られてくる。生徒たちは夏休み期間、部活と平行させながら学校や自宅で製作に取り組んだ。

名はトンイル号

 生徒たちは競技の前日まで、ロボットの製作、修正に追われた。サッカー、卓球、吹奏楽部などの部活と兼ねているため製作時間が十分になかったのだ。

 完成を急ごうと、真剣な表情でキットと向き合っている殷日洙くん(中3)はサッカー部員。午後の練習には参加できなかった。「部員たちは応援してくれるけど、監督からは『お前はクビだ』と言われました」と笑う。

 競技には2人1組で出場するが、ロボットは1人1台ずつ作る。ほかの生徒はペアで作業しているのに、殷くんの「相棒」元彰浩くん(中2)が見えない。

 元くんは、殷くんたち中級部組がいる理科室の隣部屋にいた。とても焦っている。実は、ようやく製作に取り掛かるのだ。でも、人一倍元気がいい。担当の金燦旭教員(33)から怒られながらも、「僕の夢は祖国統一だから、ロボットには『トンイル(統一)号』とつける」と大きな声でアピールしていた。

試行錯誤の毎日

 元くんが逃げ込んでいた部屋では、高級部コンビ、梁誠鎬くん(2年)と高秀明くん(同年)がまんじりともせず完成間近のロボットを見つめていた。ミスはないかと製作課程を振り返っていたのだ。

 高くんは部活に所属していないが、梁くんは卓球部員。作業はほとんど、梁くんが部活を終えてから行われた。いったん始めるとのめり込んでしまい、夜中の11時までかかった日もあったという。

 材料は指定されているが、形はオリジナルだ。アイデアマンは高くん。ひとつは玉を救い上げるショベルを作ったが、もうひとつは固い発砲スチロールを取り付け、その下に両面テープを貼った。そこに玉をくっつけて運ぶようにした。

 高くんらをはじめ、生徒たちが一様に語っていたのが「組み立ての難しさ」だ。ネジの調節が少しでも狂うとロボットの動きが不安定になる。毎日、試行錯誤の繰り返しだったという。

気持ちは来年へ

 「ロボフェスタ」への出場を生徒たちに呼びかけたのは金教員だ。自らも、娘の穂香ちゃん(初一)と出場した。

 朝大理学部(現理工学部)を卒業した金教員は、かねてから機械やロボットに興味を持ち、自作ロボットを使う競技大会を一昨年から探していた。そして、昨年、ひょんなことから同競技の関係者とメール交換をすることになった。

 受け持つクラスの生徒に出場を呼びかけたところ、10人が名乗りを上げた。11月に川崎市で開催された「ロボフェスタ神奈川2001」のプレ大会「第4回ロボットグランプリ」のスカベンジャー部門に出場し、3人が優勝した。

 今回の出場者の中には、朴政憲くん(中3)のように、「プラモデルすら作ったことがない」という生徒もいたが、昨年、先輩たちが勝ち取った栄光に刺激され「面白そう」と出場を決めた。だが、製作では細かい手作業が続くので、面倒になるときもあったという。それでも、少しでもロボットが動いたとき、モノを作ることの楽しさを知ったという。今回は残念ながら思うように結果を出せなかったが、生徒たちの気持ちはすでに、来年の大会へと走り出している。

 学校側は「ロボフェスタ神奈川2001」での生徒たちの活躍を学父母や県下同胞、ひいては同胞社会に広くアピールするとともに、低学年のうちからコンピューターの基礎知識を育み、情報教育や理数系授業に力を入れながら、教育の向上をはかっていく考えだ。(李賢順記者)

生徒たちに良い経験

指導した金燦旭教員(33)

 昨年、意外にもプレ大会で本校の生徒が優勝したこともあって、今年は学校側が全校生徒に出場を呼びかけてくれました。自主的にモノをつくることの意味を生徒たちに教えたかったからです。今回はあくまでもアドバイザーとして、すべて生徒たちのアイデアと創造性に任せました。自分自身に意欲がなければ何事も継続しないからです。

 今回の出場は、生徒たちにとってよい経験になったと思います。はじめは簡単だと思っていたロボットの製作が実はとても難しく、自分が主人公になってひとつひとつしっかり組み立てていかなければロボットは動かないことなど。今は、次はこういうロボットを作りたいと、新たな目標を定めているはずです。

 目指すのは10年後。今後はさまざまな競技に出場して初級部の頃からロボットや機械への興味を育み、長い目で着実に、技術と知識を兼ねそろえた人材を育てていきたいと思っています。朝鮮大学校や各朝鮮学校で、こういった技術を教えられる教員がわが校から誕生すれば本望です。朝大の学生が出場したり技術指導をしてくれてもいいし、もっとたくさんの朝鮮学校が興味を持ってくれたらと思います。(談、文責編集部)

スカベンジャー競技とは

 競技は2人1組で進行。180センチ(横)×240センチ(たて)のコート内に散らばっているオレンジ(予選30個、決勝50個)と白(予選10個、決勝20個)、コート中央の台上にある両色のピンポン玉(1台につき予選両色10個ずつ、決勝20個ずつ)のうち、オレンジを指定された枠内に運んだ数で点数を競う。オレンジは1個ごとに1点が加算されるが、間違って白を入れた場合にはマイナス1点となる。また、台上に白が1個残ればマイナス3点、オレンジが1個残ればプラス3点。1人が台上のオレンジの玉を落とし、もう1人が落ちた玉と転がっている玉を運ぶ。

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