取材ノート

障害者を支える人々


 長野で行われた在日同胞福祉連絡会の第1回総会・同胞障害者とその家族の交流会に兵庫ムジゲ会会長の李久美さん(45)の姿があった。

 李さんは、知的障害を抱える息子の宋鐘功さんをはじめ家族とともに参加。今年20歳になる鐘功さんは、生後1ヵ月目に風邪にかかった時、病院でもらった薬が原因で呼吸が止まって脳に酸素が行かなくなり、知的障害が残った。

 「その時、ムジゲのような組織があれば、総聯がこのような問題に目を向けていれば、病院を相手に裁判も起こせただろうし、私ももっと楽になれたと思う」

 障害を持つ家族の孤独、寂しさを少しでもいやしたいと思い、兵庫ムジゲ会の会長をかって出た。障害者と健常者がともに生きる同胞社会を切に願っている。

 彼女ら障害児を育てる保護者の言葉には力がある。日本社会や同胞社会に根強く残る偏見と差別に打ちかちながら、わが子を育てているからだ。胸には、生涯をかけて障害者に対する差別をなくしたいという信念がみなぎっている。

 関東から参加したあるオモニは、鐘功くんと息子の障害が似ていることに気付き、別れ際、李さん夫婦に相談を持ちかけていた。鐘功くんのアボジ、宋★(点の旧字)龍さんは2日間、その子をずっと観察していたようで、彼の長所をほめては、何か心配事があったら連絡して欲しいとエールを送っていた。オモニの表情がふわっと明るくなった。

 このオモニはムジゲ会の会員ではないが、息子の担任だった朝鮮学校教員の強い勧めで交流会に参加した。

 「障害児を持った親の苦悩はその子が生きている限り続く。辛い時に助け合える拠り所を作ってあげたい」――。交流会に同行したこの教員は、担任から外れた今も、家族とつながっている。

 一人一人の障害者を育てるため助け合う人々。その姿に学び続けたい。(慧)

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