控訴との同時進行 関係者ら「強い疑念」
検討会発足のきっかけになったのは、南朝鮮在住の被爆者、郭貴勲さん(77)が1998年10月、大阪地裁に起こした「被爆者援護法裁判」だ。被爆者援護法は94年、それまでの原爆医療法(57年)および原爆特別措置法(68年)に代わって制定されたも ので、国籍を問わず健康管理手当などが支給され、無料で健康診断が受けられる。 援護法そのものに居住地規定はないが、日本政府は74年の「日本国外に居住地を移した被爆者には法の適用がない」という当時の厚生省衛生局長通達(402号通達)を盾に、日本人を含めて海外に住む被爆者を一貫して同法の適用外としてきた。 これを不当とする郭さんの訴えに対し、大阪地裁は6月1日、「援護法には日本に居住しなくなった場合に被爆者としての地位を喪失する明文規定は一切ない」として日本政府と大阪府に対して同法に基づいて健康管理手当を支給するよう命じた。 しかし、日本政府は控訴。こうした矛盾した対応について、関係者からは「控訴と抱き合わせの検討会で在外被爆者への援護法適用を目的とした検討が進められるかどうかは疑わしい」(市場淳子・「韓国の原爆被害者を救援する市民の会」会長)など、政府に対し強い疑念がくすぶっている。 また、検討会は年内まで在外被爆者問題に関する結論をまとめるというが、その方向性すら定まっていない。 「日本の植民地支配」「被爆」「戦後の援護切り捨て」の三重苦を背負わされてきた朝鮮人被爆者の苦悩を考えた時、厚生労働省の姿勢は、あまりにも真剣さを欠いているといわざるをえない。 検討会は傍聴可能。第3回検討会は10月4日15時〜17時。問い合わせ=厚生労働省健康局総務課TEL 03・5253・1111 |