焼肉激戦区−繁盛店

価格下げオーダー増やす

東京・北小岩、焼肉膳酒席kim


土日は行列

 東京の下町、江戸川区北小岩の住宅街の一角にある「焼肉膳酒席kim」。6テーブル24人収容が可能。店を切り盛りするのはオーナーシェフの金成姫さん(50)。1980年に始めたキムチの乾物と味付済みの焼肉を販売する「コリアフーズ」(千葉)の経営を経て、95年11月にオープンした。

 実は同店(住宅兼)、金さんで8人目の主人となる。以前の経営者は商売がうまくいかずすべて撤退したという。にもかかわらず、金さんがあえてこの場所を選んだのは、周囲に焼肉店が1店もなかったからだ。

 しかし、今では徒歩15分の距離に約10軒あまりの同業店が軒を連ねる激戦区。それでも、金さんの店は連日、ファミリーやカップル、さらにはサラリーマンなどでにぎわっている。土日は行列ができるほどだ。

独自のからー

 オープンから6年あまり、「ようやく店の土台を築くことができた」(金さん)というが、集客力と固定客をつかむため、どのようなアイデアを駆使したのか。

 この店の特徴は、金さんが持ち前の腕を生かして、肉だけではなく家庭的な朝鮮料理を振る舞っていることと、地域柄に合わせた店作りを心がけている点だ。

 まずは、他店との差別化を図り、この店独自のカラーを出すことに努力した。客単価は飲物別で1人平均2800円。1品でも多く料理を味わえるように工夫されている。例えば価格。キムチの場合、他店では平均500円のところを330円に設定した。またチャプチェ(780円)やハチノスポッカ(同)、イカポッカ(同)、チヂミ(同)など焼肉以外のメニューは、作るのに手間やひまがかかるが利益率は高い。そこで焼肉の価格を抑え、これらのメニューを増やしたところ、注文が増えた。「この店でなければ食べられない」という評判も定着した。

 食材にもこだわった。野菜はすべて無農薬、味噌は無添加のものを使用。コチュジャンが手作りなのもセールスポイントだ。

 当初、地域初の焼肉店とあって、集客のための対策も講じた。店の外に写真入りのメニューを拡大して表示し、焼肉やその他のメニューに対する説明を付け、気軽に来店できるようにした。外観をタイル張りにして明るいイメージにしたところ、ファミリーやカップルが増えた。生ビールの価格を390円に下げ看板に表示したらサラリーマンが、カルビを500円に下げたら若者客が増えた。半額、30%オフデーなどを設け、年に4回は新聞の折込み広告も出している。割引サービスをするのは、新規の顧客をつかむためと、日頃の感謝の意を込めて常連客に還元するためだ。

 メニューも増やしている。定食やファミリーコース、テグメン、チョレギサラダのSなどを設けた。いずれも客のニーズに応えてのことだ。サラダのSは必要量に応じたもので、価格は通常よりも安くなるがその分、ほかのオーダーにつなぐこともできる。客の立場に立ってメニューを構成するところに、「オーダーを増やすコツがあるのでは」(金さん)という。

ロスの削減

 ロスの削減は、仕入れ内容と労働時間などで行っている。上カルビ(880円)、特上カルビ、特選カルビは和牛のリブロースを使用している。店の規模がそれほど大きくないため、一枚バラを仕入れてさばいていては仕込みに時間がかかり、鮮度を保つことも難しくなる。そのため、6〜8キログラム単位で購入できることなどからリブロースを使っているが、仕込みの時間を削減するため肉はすべて5ミリ単位にカットしてもらって購入している。

 営業時間も、当初は午後5時から午前1時までだったが、12時、さらには11時までに短縮した。短時間勝負だが、効率よく店を運営するためと、子どもたちと触れ合う時間を少しでも多く作りたいという考えからだ。

 持ち前の腕とそのアピール力で、店は連日にぎわっている。(羅基哲記者)

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