第20回留学同祖国訪問団
高麗磁器、チョゴリ作り/ダチョウ牧場見学/ウリマル習得
民族知った夏休み
白頭山に登る。天地をバックに全員で記念撮影 | ダチョウ牧場を見学した「統一国家建設コース」の参加者たち |
日本の大学・専門学校に通う同胞学生らが夏休みを利用して祖国、朝鮮を訪れた(主催=在日本朝鮮留学生同盟中央本部)。期間は8月10日〜21日(長期滞在は9月3日)。20回目を数える今年は、「民族文化スポーツ」「統一国家建設」「ウリマル短期留学」と、このうち一つを選び追加滞在する「長期滞在」の4つのコースに分かれ、合わせて50余人が参加した。参加者らは各コース別のスケジュールをこなしながら、平壌市内や白頭山観光、祖国の大学生との交流会、そして8.15民族統一大祝祭にも参加した。3、4世の彼らの目に祖国はどう映ったのだろうか。
4コースに分かれ 滞在中、訪問団一行は5日間をともに行動し、14日から18日まではコース別の日程が組まれた。 「民族文化スポーツコース」の参加者は高麗磁器やチョゴリづくりを体験し、高句麗壁画を参観、人民体育人ケ・スニとの交流会などに参加した。「統一国家建設コース」のメンバーはダチョウ牧場や複合微生物肥料工場、板門店、朝鮮戦争時の米軍の蛮行を伝える信川博物館を訪れた。 「ウリマル短期留学コース」では、専門講師によるウリマル講座が行われ、平壌外国語大学で日本語を専攻する3人の女子学生が通訳としてコースに同行した。 自分の目で確認 金英姫さん(大阪女学院短期大学2年)は中級部まで朝鮮学校に通っていたこともあり、漠然とだが「祖国」に対する思いはあった。しかし、自分が教わってきたものと日本のマスコミ報道のギャップの大きさにとまどい、自分の中で「祖国」の存在が揺らいでいた。「だからこそ自分の目で祖国の実状を見極めたかった」と話す。 祖国では分断の歴史や現状、人々の生活など多くの事を実際に見て知った。そこで得た知識や体験の一つひとつが、英姫さんと祖国との絆を深める役割を果たした。「そこにルーツがある限り、私の祖国への思いは決して揺らぐことはない」と言葉にも力が込もる。 尹豊さん(岐阜経済大学3年)が「民族文化スポーツコース」に参加した動機は、パヂチョゴリ作りに挑戦したかったからだ。かつて読んだ本の中で、日本の植民地時代、国や名前、言葉まで奪われながら、民族の誇りと尊厳をアピールする象徴として、チョゴリという存在があった。 「僕にとってパヂチョゴリを作って着るということは、そういう先代たちの民族への思いを堅持することにつながる」 豊かな未来を 「統一国家建設コース」に参加した黄義孝さん(大阪芸術大学2年)は小学校から日本学校に通い、大学では環境計画を学んでいる。高校時代の学生会や留学同の活動を通して「民族意識」が芽ばえていったが、祖国の存在は遠いものだった。しかし今回の訪問を通じて、「専門分野を生かして、祖国に貢献する道があるのではないか」と自然に考えを巡らせていたという。祖国の街は緑地が最大限に生かされており、区画整理に無駄がない。目先の利益にとらわれず、未来を見据え設計されている。生活や建物はシンプルでも、精神的な豊かさにあふれていた。 「豊かな祖国の未来をともに築いていきたい」と心から思えたことが何よりうれしかったという。 崔翔美さん(京都外国語大学3年)は、8.15民族統一大祝祭に参加した感想をこう話す。 「北と南の人々と手をつなぎ、一緒になって統一を願う自分がいた」。生まれた時から祖国は分断されていた。そのことに違和感すら覚えず生きてきた。しかし、祝祭で一つになれる喜びを感じた時、祖国の分断がどれほど悲しいことか実感できたという。 「日本に帰ったらこの感動を留学同のトンムたちに伝え、みんなと一緒に統一のために力を尽くしたい」と今後に意欲を燃やしていた。 本当に大切なもの 許聖花さん(戸田中央看護専門学校2年)は滞在中、祖国の人に思いもよらない言葉をかけられた。「…異国の地での暮らしは大変でしょう。困難な状況でも、自国に暮らせる私は幸せです」。 経済的に豊かな日本で暮らしながら、祖国の人々に対して心のどこかで優越感を抱いてはいなかったか。自分の国に対して、第三者的な立場で接していた自分に気づいたという。 「祖国の人々は民族を誇りに思い、いかなる状況にあろうと国とリーダーを信じて、自分たちの力で前進している。その姿から、人間にとって本当に大切なものは何かを教えられた」(禹正美記者) |