閑話休題

3年連続3万人の自殺者

「幸せ生まぬ競争社会」


 「3万1957人」、「13万4000人」。この2つの数字が何だか分かるだろうか。

 前者は今年の8月9日現在の、日本の自殺者の数(警察庁調べ)。後者は8月10日に発表された不登校の小中学生の数(文科省調べ)。

 数字は、それ自体が雄弁である。自殺者の数は98年に3万人を超えて以来、3年連続。

 過労死や過労自殺問題を扱う過労死弁護団全国連絡協議会(東京)の川人博幹事長は「人口10万人当たりの自殺者の数も約25人で欧州の約2倍」(朝日新聞)と指摘している。

 政府の進める構造改革に伴う「痛み」の結果がこの数字に何より端的に現れている。今や官僚もメディアもオウム返しのように「痛み」「痛み」と唱えるばかり。リストラ、負債、生活の破たん、家庭の不和…。原因はそれぞれだが、冷酷な政治や行政のもと、彼らの悩みを救うシステムもない。景気の回復が何よりの処方せん、などと脳天気なことを言う評論家もいたが、何をかいわんや、である。

 不登校の数字も、増加の一途をたどる。背景に家庭崩壊などの深刻な社会の病巣も指摘されている。映画「学校」シリーズなどを手掛ける山田洋次監督は「今の日本は教育を含めて、人間が幸せになれたかというと、決してそうではない。学校は競争社会の中で、窒息しそうな子供たちをたくさん生み出している」と現状を鋭く指摘する。

 大人が壊れ、子供が壊れ…。悲痛な声が満ちている。挫折を味わい、横道にそれてもいいではないか。競争から抜け出て、自分らしく、そして時には、他人にお節介を焼いてみては。(粉)

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