コリアのチャンプの素顔

We  are  One!


 在日朝鮮人ボクサーとして初めて世界王座に輝いた洪昌守(26)。24日には3度目の防衛戦にのぞむがこのほど「We  are  One!  Hong  Chang  su」というタイトルの本が、流星社から出版された。

 本書は昌守のすべてを、熱い心で追い続けたフォトグラファー・M・S・PARKとアートディレクター・清野僚一の手によって生まれた。「在日」ということで、特別な注目を浴びながらも、プレッシャーを力に換えて、チャンピオンベルトを守り続ける昌守。

 その類まれな才能を生み、大切に育てた父と母、家族。「自信家で楽観主義者。華やかさもある。いい王者が誕生した」(朝日新聞8月28日付)とマスコミまで味方につけた昌守の率直な人柄。底抜けに明るい素顔を丸ごと写しだすカメラもペンもいい。

 祖国の最高の名誉である労働英雄勲章を胸につけ、成田に帰ってきた昌守の誇らしそうな笑顔、ソウルの防衛戦で快勝、翌日ショッピングに出かけるスナップ。ハルモニや子供たちに声をかけられて破顔一笑する顔。人間味豊かな表情に思わず引き込まれる。

 東京から大阪に移り住んで7年。浪速の厚い人情に育てられて、快挙をなしとげた。出会った周囲の人々を、「真っ直ぐで、気取りのない生き方」(著者)で魅了する昌守。それが、前人未到の道を開く原動力になったのだろう。韓国MBCの解説者韓宝栄氏は「KOREA  IS  ONEとトランクスに刻んで、闘う戦士というか、海外にいながら朝鮮の平和を願うというのはなかなか見上げたものだ」と称えた。

 さらに、ソウル防衛戦の2日後、世界ボクシング評議会(WBC)はプレスリリースを発表して、こう指摘した。「この試合は単なる防衛戦ではなかった。…統一旗を掲げ、統一と許しを求める国歌を斉唱することで、この2人を祝福する韓国の観客も素晴らしかった。世界中の人々は、我らすべてが人間の愛と善意、そして平和を希求していることを理解するだろう。WBCはこのスポーツを誇りに思う」。

 本書にはこうした素晴らしいエピソードが網羅されている。熱い、ピュアな気持ちで書かれた記事は感動を呼ぶ。ウリハッキョの子供たちに勧めたい一冊。(流星社、1900円+税、TEL  03・5333・1074)

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