初の在日同胞福祉連絡会総会
高齢者、障害者助ける生きた組織に
在日同胞福祉連絡会の第1回総会が25日、長野朝鮮初中級学校で行われ、役員、規約、当面の活動が決定された。代表に愼英弘・花園大学助教授、副代表に「ムジゲ会」の申桃順会長、金永子・四国学院大学教授、評議員に林瑛純(東京)、鄭大成(愛知)、李誠(広島)、李久美(兵庫)、徐貞子(大阪)、崔玉貴(山口)さんらが選出された。5月に結成された同連絡会は当面、地方組織の立ち上げや無年金高齢者、障害者に対する救済措置を日本政府や自治体に求めていく。また25、26の両日にかけて同胞障害者とその家族が交流する「同胞福祉連絡会フェスタin長野」(同連絡会主催)が行われ、250人が参加した。参加者の感想から、今後求められる福祉連絡会の在り方を探った。
切実な当事者 総会で規約の説明が行われた後、ひっきりなしに質問を投げかけていた同胞がいた。下関から家族とともに参加した姜吉彰さん(43)。次女の仁愛ちゃんが、70万人に1人といわれる難病「コルネリア・デ・ランゲ症候群」の障害を持つ。左腕は手首までしかなく、心臓疾患、難聴、知的・発育障害も重複している。 「活動の内容に障害者の自立と社会参加に必要な情報の収集、提供とあるが、間違った情報かどうかは誰が判断するのか」「部会を設けるとあるが、専門家は入るのか」――。 姜さんは質問をぶつけた理由について、「例えば障害者が就職を希望した場合、受け入れる同胞企業があるのか。あるのなら、どこにあるのかすぐに教えてくれるような生きた組織であって欲しいからだ」。 当事者にとって必要なのは具体的な助け、正確な情報だ。 受け皿と実践 25日の夜、松本市内の旅館で開かれた障害者の保護者たちの懇談会は徹夜になり、早朝まで議論が続いた。 37歳の長女が心身障害を抱える権教俊(65)、金慶子(60)夫妻(兵庫・宝塚在住)。 「親としては、わが子を見届けるのが本望。しかし、夫婦のどちらかが倒れた時を考えると、娘が生涯暮らせるチョソンサラムの施設があればどれだけ安心だろう…」(金さん) 生涯暮らせる施設や働ける作業所、アイデンティティーを育む民族教育の保障…。障害者を抱える家族の願いを今すぐに実現することは現実的に難しい。障害と民族という二重の差別、制度の壁、人々の偏見は強く高く、そして根深い。 4年前、広島県では、同胞障害者の民族教育の権利を実現する「併習制度」が生まれた。広島朝鮮高級学校と日本の養護学校の両方に籍を置くという例のないものだ。 保護者、日・朝の教育関係者が李鎬烈という一人の同胞障害児の願いをかなえるため、行政に対する交渉を重ね、日本社会で民族教育を認知させる地道な努力を続けた。実現までの道程は10年。運動に関わってきた広島ムジゲ会の李誠事務局長(33)は「そう簡単に行政は動かない。根気のある運動が必要だ」と話す。 連絡会の鍵を握るのは地域の活動だ。交流会では兵庫、愛知などで各地の「ムジゲ会」を支えるボランティア団体や後援会が結成されていることが報告されたが、障害者の願いをかなえるさらなる受け皿作りとその充実が求められている。 課題が山積しているという点では高齢者問題と同様だ。 同胞高齢者のための介護事業やデイハウスなどの「場」作りは各地で取り組まれているが、生活実態の調査やニーズの掘り起こし、システム作り、人材育成など、地域の特性に合ったきめ細かい取り組みが今後も求められよう。 5月、連絡会設立を兼ねたシンポジウムで愼代表は、連絡会が発足したことで同胞高齢者、障害者の無年金問題など、全国レベルで解決が望まれる課題にも取り組めると語ったが、これらの運動は地域の活性化にもつながる。 高齢者や障害者たちが長年訴えてきた課題をより早く解決するため、連絡会は生まれた。総会には、福祉問題に携わる実践家、ボランティア、研究者も参加していたが、連絡会を中心に広がるネットワークこそ、福祉問題の底上げをはかる「力」になる。(張慧純記者) 在日同胞福祉連絡会連絡先=TEL 090・9319・5571、e―mail:nwj9b081@hi-ho.ne.jp |