公調の不当な外登原票入手事件

日本各界が厳しく批判

18都道府県で418人以上に


 本紙既報のように、公安調査庁(公調)は京都、大阪、兵庫、福岡など2府7県にわたって、破壊活動防止法(破防法)の調査を口実に336人の外国人登録原票を入手していたが、その後の報道などを総合すると28日現在、さらに82人以上分の原票を入手していたことが明らかになった。北海道札幌市38人、茨城県水戸市4人、東京5区21人、滋賀県大津市4人、岡山市4人、長崎市11人、また静岡市と愛媛県松山市でも数人。これで18都道府県418人以上になる。総聯の各組織が事実発覚直後から関係当局に抗議行動を繰り広げているなか、法曹界をはじめとする日本の各界人士らも「人権侵害」「国際規約、憲法違反」などと批判の声を高めている。

国会レベルの追及不可欠

田中宏(龍谷大教授)

 指紋拒否運動のなかで、警察などによる外国人登録原票の安易な利用を許していた自治体は厳しく反省したはずだ。原票の管理に関する規定は一昨年の法改定で初めて加えられ、開示を求めるには理由の明示が必要だ。公安側が市に示した「破壊活動防止法第27条にもとづく調査」だけでは理由明示と言えない。破防法27条が引用する同法3条には「調査は必要な最小限度においてのみ行う」「自由と権利を、不当に制限するようなことがあってはならない」とある。市役所側は、もっと注意を払う必要があったのではないだろうか。京都の学者たちは協力し、市当局に抗議する予定だが、国会など国レベルでの追及も不可欠だ。

明らかな破防法乱用

空野佳弘(弁護士)

 明らかな破防法の乱用だ。おそらく実態としては頻繁に行われており、今回、偶然表面化しただけだろう。

 まず、総聯が破防法の適用容疑団体だということ自体から問題だ。また、今回の事件に関して公安当局は、破防法の調査対象を誰に定めているのか、個々人の外国人登録原票の調査がどの程度必要なのかを明らかにすべきだ。明らかなプライバシー侵害、人権侵害にあたり、大阪市をはじめとする自治体は、住民の権利を守る立場に立って原票を渡してはいけなかった。

国際規約、憲法違反

家正治(濁教大教授)

 世界人権宣言、国際人権規約など、国際的な人権保障の観点から見ても真っ向から抵触する事件だ。日本国憲法にも違反する。

 外国人、その中でも在日朝鮮人をつねに管理の対象とし、敵視してきた日本政府の政策が事件の延長線上にある。これは外国人のみならず日本人の人権にも関わる問題だ。抗議の姿勢を示して行きたい。

 注視すべきは、小泉首相の靖国神社参拝や歴史わい曲教科書の検定合格などに象徴される、国家主義的な流れの中でおこった事件だということ。おそろしさ、危険を感じる。(国際法専攻)

国の人権行政問われる

津留雅昭(弁護士)

 福岡、博多の町は古くから中国や朝鮮との交流の窓口となっている。また多くの在日朝鮮民族が居住する町として、お互いの共生、交流に務めてきた。今回の事件は、このような民族の相互交流、共生と平和を求める福岡の市民の願いを踏みにじり、歴史的潮流に逆行するものだ。まして一方では人権擁護を標ぼうする福岡法務局の、同じ庁舎にある公安調査局が平然と、最も慎重であるべき在日外国人のプライバシーに関わる情報を密かに集めていたということは、国の人権行政や外交の基本的姿勢が問われる重大な問題だ。

戦争被害国民への弾圧

村上繁(広島高教組国際連帯推進委委員長)

 在日外国人に対する人権侵害だ。各地の自治体でプライバシー保護条例を奨励しようとする動きがあるなか、今回の事件はそれに逆行するものだ。とくに日本政府は教科書問題の解決や戦後処理もまともにせず、戦争の被害国の人に対する弾圧を強めている。そもそも外登法自体、その対象者への抑圧を目的に制定されたものだ。

 また、南北朝鮮が和解に向け動き出している国際情勢に水を差すような行為でもある。

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