取材ノート

在日とは無縁の破防法


 「水に落ちた犬は徹底して叩け」。敵対する者を倒すためには、相手がギブアップするまで手段、状況を考慮せずに攻撃しろということだ。

 今回、明るみに出た公安調査庁(公調)による外国人登録原票請求事件は、本質においてこの例えと変わらない。

 在日同胞を取り巻く日本社会の状況は、10年、20年前と比べれば改善されつつあるものの、「敵視」という一点においては何も変わっていない。「破壊活動防止法」(破防法)に関連する調査を口実にした公調の原票請求は、改めてそのことを見せつけた。

 1952年7月に施行された同法は、「暴力主義的破壊活動を行った団体に対する必要な規制措置を定め…もって、公共の安全の確保に寄与する」ことを目的としている(第1条)。ちなみに「暴力的破壊活動」とは、「内乱」「内乱陰謀」「内乱等のほう助(支援)」「外患(外国からの武力行使)誘致、援助」などを指す(第4条)。

 なんともたいそうな規定だが、「この法律は、国民の基本的人権(思想、信条、集会、結社、表現及び団体行動など)に重大な関係を有するものであるから、…これを拡張して解釈するようなことがあってはならない」(第2条)とも釘を刺している。

 しかし、いったいこのどの項目が今回、原票申請・入手の対象になった同胞たちに該当するのだろうか。

 そもそも破防法は団体に向けられたものだから、総聯を念頭に置いたものであることは明らかだが、祖国の自主的平和統一と在日同胞の権利擁護、その拡大、さらに相互扶助を目的として結成され、活動している総聯にとって無縁の存在である。

 だから、人権をじゅうりんするものだとして、謝罪と再発防止を求めて各地の総聯組織と同胞、そして日本市民たちが怒り、抗議、非難の声を上げているのだ。(彦)

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