東海ブロック・サマースクール
友だち、民族の心、本当の自分…
参加者たちが見つけたもの
キャンプファイヤーで「朝鮮人最高!」と、力いっぱい叫ぶ生徒たち | 大勢で食べるバーベキューの味は格別 |
今月1日から日本各地10ヵ所で、日本の中学・高校に通う同胞生徒らを対象にしたサマースクールがいっせいに開かれた。東海ブロック(7、8日、岐阜県・荘川高原)には長野、愛知、岐阜、三重県から日本の中学・高校に通う同胞生徒ら50余人が参加しゲーム、キャンプファイヤーにフォークダンス、スポーツ大会などの楽しい時間を満喫しながら交流を深めた。参加者たちはとくに、「国際結婚」「本名」などをテーマにしたディスカッションを通じて、少しずつ「民族」を意識し始めていた。
友だち作りから 友だちがたくさんできるから楽しい――。参加者が一様に語っていた言葉だ。普段は人見知りするのに、サマースクールの場では理屈抜きで、誰ともすぐに打ち解けられるという。 初参加の尹美奈さん(三重・高3)。住んでいる伊勢市には、尹さんの知る限り同年代の同胞がいない。また、学校に日本名で通い、友人にしか自分の出自を明かしていない尹さんは、「私とは生き方、考え方が合わない」と、「朝鮮学校出身者の集まり」に参加することは避けてきた。 でも、サマースクールには自分と同じ境遇にある人ばかりが集い、自分が朝鮮人であることを自覚し、それをアピールして堂々と生きていこうと、日本学校に通うコリアン同士の友情を育む場だと聞き、出会いを求めてやって来た。 「今回が最初で最後の参加になってしまったけど、卒業前に同胞の友だちをつくれてよかった。朝鮮人として生きていくためには本名を名乗るべきとか、朝鮮学校でしか真の民族は学べないなどといった、自分とは違った考え方が、朝鮮人としての私の人生観にプラスになった」と語る。 芽生える自覚 あっという間に過ぎた2日間だったが、参加者がそれぞれの思いを素直に吐露したのが、ディスカッション「徹底討論、ここが変だよ在日コリアン」だった。 日本人と結婚してもいいと思うか、学校で自分が朝鮮人だということを何人が知っているか、今後、生きていくうえで本名は必要か――などの各テーマ別に話は進められた。 李彰秀くん(岐阜・中3)は毎年参加している。「僕は朝鮮人であることをひけめに感じたことはない。だから本名で通っている。周りは『君、中国人?』と必ず聞いてくる。そんなとき、日本人は本当に朝鮮のことを何も知らないんだなと悔しくて悲しくなる」 金将秀くん(愛知・高3)は、卒業を目前に控えて本名宣言を決意した。「2学期から本名で通う。担任の先生にも宣言した」 今回で4度目の参加になるが、本名で学校に通っている友だちがいつもうらやましかったという。「卒業後は就職するが、僕は朝鮮人の誇りをもって生きていきたい。だから勇気を出す。周りから隠していると思われるのはもう嫌だ」と熱く語った。 「本名は必要?」との質問には、多くの学生が必要だと答えた。しかし、本名を名乗っている学生は少ない。それでも、周囲のほとんどは自分が朝鮮人であることを知っているという。というのも、親しい友人にだけは真実を打ち明けているからだ。「朝鮮人の自分が本当の自分」という自覚はもう芽生えている。 安心できる 国際結婚に関しては、相手が朝鮮人でも日本人でもどちらでもかまわないという意見が大半だった。民族をうんぬんする前に、「朝鮮人との出会いが少ない」からだ。だから、年に1度でも同胞と楽しいひとときを過ごすサマースクールは、学生らにとっては貴重な場となっている。 金明徳くん(長野・中3)は2度参加した。その過程で「同じ朝鮮人の友だちと一緒にいると安心できる。朝鮮学校に通いたい」という思いが強くなったという。「僕たちの面倒を見てくれるチドウォン(指導員)のような仕事に憧れる」。来年は卒業。夏休み中に両親と真剣に話し合うと語っていた。 李相逸くん(愛知・高3)も、「僕は朝鮮大学校に行きたい」と金くんと思いを同じくする。「初めて会った人ばかりなのに、朝鮮人の友だちは日本人よりも親近感がわく。一緒に学びたい」。口調は静かだが思いは熱い。 「自分が朝鮮人だと知ってはいても、ウリマル(朝鮮語)、本名、歴史…、結局僕は何もわかっていない。サマースクールは本当の自分を探せる場だ」と語った朴守遠くん(岐阜・高3)は、初日の夜に行われたキャンプファイヤーで、参加者を前に思い切り叫んだ。「僕は朝鮮人だ!」(李賢順記者) |