朝鮮のパッチワーク「ポシャギ展」、三重県桑名で

温もり、優しさ伝えて


 在日1世のハルモニが一針一針縫った朝鮮民族の伝統的パッチワーク「ポジャギ」を展示する「ポジャギ展〜ふろしきのかたち」が、2日から5日まで、桑名市の中部電力桑名営業所のギャラリーで開かれた。

 展示されたのは東京・小平市で小川コリア文化交流会を主宰する李相★(ころも偏に乍)さん(53)のオモニ、朴先丹さん(90、三重県)が約70年前、丹精こめて縫い上げたポジャギ。チマ・チョゴリを縫った際に出た余り布で、朝鮮半島では御膳かけとして使われているもの。

 朴さんは日本の植民地時代、朝鮮の忠清北道で生まれ、70年前に渡日し、さまざまな苦労をしながら、5人の子供を育ててきた。末っ子で一人娘の相★(ころも偏に乍)さんは、「祖国に帰った兄の家庭でも母の作ったポジャギが大切に使われています。朝鮮に伝わる伝統的な手仕事とその感触を味わってほしい」と語っていた。

 なお、「ポジャギ展」は10月に三重県桑名市の百五銀行本店で、11月には大阪・鶴橋でも行われる予定。TEL  042・343・8803まで。

祖国の兄のオンドル部屋を飾る花に

李相★(ころも偏に乍)

 次々と2人の息子を亡くした悲しい年に、私に譲ってくれた針刺しは、オモニ(母)の人生をたどるきっかけとなりました。

 チョゴリを縫った後の小さな余り裂が、オモニの手で一枚一枚つながれて、四角い布となり、オモニの名づけた パッププジュ(ご飯かけ) になったのです。すっかり忘れていたその布が、半世紀たった今、遠く離れて暮らすオッパ(兄)の家でも使われていました。「誰にも譲れぬ大事なもの」と、オモニの作ったチョガッポは、きっと今はオンドルの部屋の花になっていることでしょう。オッパも老いを意識する年となりました。一枚一枚の淡い切端が、いろんな思いと重なっていることでしょう。

 日本に来てから2台目のミシンは、今も母のそばにあります。針箱には布団針の姿も見えます。けれど、もうその手で針と糸を持って布を縫うことはなさそうです。

人生刻む一針一針

「ポシャギ展」を見て−姜貞姫

 今夏のある暑い日、私の元に一通の招待状が届いた。いたく興味を引かれた私は、嫁と孫を連れてその場所に足を運んだ。そして、喜びと驚きを禁じえなかった。なんとそこでは私が新米教師の頃のある教え子が企画したポジャギ(風呂敷)展が開かれていた。

 展示品を眺めれば眺めるほど、作り手の熱い思いが伝わってきた。齢90の坂を超えたハルモ二が、真心と丹精をこめて一針一針縫いつづり作り上げた作品には、彼女の人生の歩みが刻まれているかのような感銘を受けた。

 どの家庭にも代々受け継がれてきた歴史と伝統があると思うが、この展示された作品すべてにも愛着が込められていた。幼い頃を彷彿させる故郷の甘い匂いがする品々がたくさん展示されていて私の胸も熱くなった。中でも、ハルモニの手並みが嫁、娘、孫娘へと代々引き継がれている作品、一人娘が嫁ぎ舅と姑をよく慕い、ともに幸せに暮らすことを願いつくった風呂敷は、色あせていても温かいぬくもりがしみついているような気がした。

 最近の同胞社会は、民族性、伝統が薄れているとの声をよく耳にする。名高い著名人の作品などをたくさん見る機会はあったが、純粋に子育てに励んできた素朴で力強いオモニらの手並みをみるのもまた格別だった。暑い中、心洗われた清々しい一日だった。また、企画した教え子も訪れた人々に熱い思いを与えたと思うと、うれしさは倍増した。(岐阜市、60)

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