公安調査庁の不当調査
人権弾圧、恐るべき犯罪行為
20日、抗議のため京都法務合同庁舎内にある京都公安調査事務所を訪れた総聯京都府本部の代表 | 日本当局は1400人以上の警官を動員し94年4月25日、総聯大阪府本部を強制捜索した |
公安調査庁が、「破壊活動防止法」に基づく調査の名目で、在日朝鮮人の外国人登録原票の写しを京都、大阪、神戸、奈良の各市・区役所を通じて計159人分(京都市では87人分)を入手していた事件は、同胞社会に激しい怒りと衝撃をもたらしている。
在日朝鮮人を治安の対象として、常時監視しようとする日本当局の行為は、恐るべき犯罪行為として国際的な指弾を免れない。この事件は、市の人権意識の希薄さと日本当局が在日朝鮮人取締法としての外登法をいかに悪用しているかを浮き彫りにするものだ。 何ら犯罪の嫌疑もない一般在日同胞の個人情報、しかもこれほど大量の登録原票の写しが、公権力によって公然と行われた事実は、日本市民らの怒りをも呼んでいる。「平和を求める日本とアジアの民衆に対する冒とくであり、許されざる挑戦」(「北海道在日朝鮮人の人権を守る会」の声明)との声も高まっている。 事件のもう一つの問題点は、外国人の基本的人権を保護すべき京都市などの市当局の人権感覚の欠如であろう。自治労の調査によれば、全国の自治体の外国人登録職場は、「公安警察官の日常的な情報収集の場」(「外国人登録法改正に向けて」85年版=自治労発行)となっている。同調査によれば、自治労のアンケートに応えた319の市・区のうち実に88%に当たる239の自治体で「警察による登録原票の閲覧」が日常茶飯事に行われていたという。 在日外国人を治安取締対象にして、犯罪者扱いをしている公安・警察当局に、市当局が手を貸している実態をそこに見ることができる。問題は深刻である。 外登法の登録原票制度はいわば外国人の「戸籍」に当たるもので、記入項目は66項目に及ぶ。住所、氏名、生年月日、家族構成、上陸許可年月日、さらに職業まで記入することが義務づけられ、顔写真や指紋の欄もある。本人が申告する情報のほかに、顔写真の登録番号、それに指紋押捺や押捺に代わる本人署名を拒否した理由なども記載される。在日朝鮮人にとっていわば、「個人情報の集大成」にあたるものが登録原票なのだ。登録事項の変更があれば、所定期日内の変更申請が義務づけられているので、これを確認することによって、警察は居ながらにして外国人の実態を把握できるのである。 今回の事件からは、在日朝鮮人を冷戦時代と同様に「敵性外国人」とみなし、「在日朝鮮人=治安対象、犯罪人」とする日本当局のゆがんだ排外主義を読み取ることができるのだ。 在日同胞の規制、弾圧狙う 拝外主義の根強さを示す 冷戦後、日米安保の強化・再編の説得力を失った日本の支配層は、ソ連に代わる新たな「脅威」として、「北朝鮮の脅威」のでっち上げに狂奔してきた。 99年、ガイドライン関連法が成立した後、その次に戦争遂行に市民生活を服従させる有事法制が待ち構えているが、すでに、その1つとして、朝鮮を想定して、日本政府が97年に事前に制定したのが、外為法改正に基づく経済制裁措置だ。さらに、「組織犯罪防止法」、盗聴法などは在日朝鮮人を狙うものであり、国内ファッショ体制確立の前ぶれでもある。 日本政府が描く朝鮮有事のシナリオとは――。「まずは公務員の往来停止や貿易停止など、初期の経済制裁実施。北朝鮮に態度の変化がなければ、海上臨検や海上阻止行動など、経済制裁を有効なものにするための実力行使…」(朝日新聞97年12月24日付)とされ、朝鮮への送金停止問題は、まさに朝鮮への「宣戦布告」として位置づけられているのだ。 その際、「北朝鮮関係の団体や個人に対する資産凍結」(同紙)も論議されたが、「政府内で『実施不可能』との結論に達した」という経緯がある。 日本政府が朝鮮有事を想定して、いかに計画的な弾圧計画を練ってきたかが分かる。梶山静六官房長官は96年8月8日の講演で、有事立法に触れて朝鮮半島情勢を有事の具体例に想定していると述べた。 梶山発言は日本政府首脳の本音をあからさまに表現したものであり、有り体にいえば@朝鮮半島に日本(自衛隊)が出動する準備を今からしておこうということでありAその際、まず在日朝鮮人の弾圧のために自衛隊を動員することを明確にしたものである。 有事体制作りの目的は言うまでもなく、自衛隊の朝鮮派兵とそのための「国家総動員体制」の構築である。それを証明したのが2つの事件であった。日本当局は94年4月に1400人以上もの警官を総動員して総聯大阪組織を強制捜索し、6月には総聯京都を強制捜索するという無差別な政治弾圧を強行した。 憲法学者の星野安三郎氏はこの不当な弾圧を「1950年の朝鮮戦争前夜の在日朝鮮人に対する弾圧を思い浮かばせる。また朝鮮で戦争が起きた際、日本国内で自衛隊を治安出動させるための予行演習だ」と批判した。 まさに有事立法をにらみ強行された在日朝鮮人に対する弾圧事件であった。今回の京都をはじめ一連の事件がこれらの延長線上にあるのは言うまでもない。 |