春・夏・秋・冬 |
「英霊」「御霊」――この夏、とくに日本社会を飛び交った単語である。まき散らしたのはいうまでもく、かの首相だ。日本帝国主義とその軍隊の非道性については、いうまでもなく侵略された朝鮮、中国などアジアの諸民族が一番よく知っている。「従軍慰安婦」にされた同胞たちはその生き証人でもある
▼またその軍隊が戦時のみならず平素から、暴虐と非人間的行為の集団だったことについては、「真空地帯」(野間宏)や「神聖喜劇」(大西巨人)に詳しい。いじめは日常茶飯事、そしてテロ、リンチ。耐え切れず自殺した者は数多い。戦場では飢餓にあえぐ同僚によって食べられた軍人もいる(「俘虜記」大岡昇平)。その彼らも「英霊」「御霊」? まさに「喜劇」である ▼それ以上に「喜劇」なのが、日本の戦後の在り方だろう。「天皇」を日本支配のテコとして利用するために「平和主義者」に作り上げた米国。それに便乗した「天皇」と取り巻き連中。揚げ句のはてに「天皇の戦争責任」も押しつけられたA級戦犯。「現人神(あらひとがみ)」と服従を強いてきただけに反論もできない ▼「天皇」の敗戦放送と同時に、内外の軍需物資(食糧はむろん金銀、ダイヤモンド、白金などまさに財宝の山)の隠とく、山分けに走った高級官僚・軍人など支配層たち。それが天皇よう護勢力の党結成原資になったのは有名な話だ ▼そして最大の「喜劇」は、極東軍事裁判に被害国の朝・中が参加していない事実である。「敗北を抱きしめて」(ジョン・ダワー)に詳しい。(彦) |