楽しさ優先、そして技術習得
第23回在日朝鮮初級学校中央サッカー大会
「今度は必ず優勝するぞ!」 | 指導教員の話に耳を傾ける選手たち。その目はとても真剣だ |
5〜7日の3日間、茨城県のカシマグリーンランドサッカー場で行われた第23回在日朝鮮初級学校中央サッカー大会。8人制競技が初めて行われ、人数の少ない学校や多くの生徒たちが桧舞台に立てるようになった。今大会を振り返って、一番印象に残ったのは、選手たちが純粋にサッカーを楽しんでいることだった。
◇ ◇ 中大阪初中級学校の初級部サッカー部監督を務めて3年目になる鄭徳杉教員(26)。同校は、惜しくも埼玉初級に決勝戦で敗れたが、予選では試合巧者ぶりを発揮して大阪府予選2位の実力を見せつけた。 一昔前の初級部監督というと、サッカーをよく知らない人が多かったのが実状だ。 中大阪初中では近年、このような問題点を教員、学父母たちが話し合い、対策をねってきた。 その1つは、指導員たちが専門の資格を取得することである。 同校では、選手個人の基礎能力、技術向上のための指導を専門的に行うため、監督自ら「準指導員養成講習会」に参加し、実技、筆記試験を通して99年に準指導員の資格を取得。コーチを務める朴正成教員(24)も今年、準指導員の資格を取得した。受講料はサッカー部の学父母たちがまかなった。 「準指導員」とは、文部大臣認定「地域スポーツ指導者・初級」の専門科目修了者をいう。主催は(財)日本サッカー協会で、講習会の内容は大きく、講義、実技、筆記試験の3つに分けられる。 「学父母のサッカーに対する意識の変化を感じる。その分、期待が大きい。今は練習にもテーマを持って、選手に何をどのように習得させるのかを考え、中・高級部サッカーの向上につながるよう指導をしている。でもこの時期、一番大切なのは子供たちがサッカーの楽しさを知ることだ」(鄭教員) ◇ ◇ 「サンフレッチェ広島の李漢宰選手、そして広島朝高のインターハイ出場が選手たちにいい影響を与えている」。こう語るのは、広島初中高級学校・初級部サッカー部監督の呉洋太教員(25)。 今大会は、惜しくも2部での成績に終わったが選手たちの表情は晴ればれとしていた。やはり楽しさ優先、ついで技術習得という指導をしている。 「練習メニューの指導案の作成には、専門書をよく読んで参考にしている。昔は『根性サッカー』でよかったかもしれないが、今は全体のレベルもあがり、それでは通用しない。日本の大会にも多く出られるようになったので、選手たちもそれに影響を受けて、向上心がでてきた。それに応えるためにも、選手とのコミュニケーションを大事にして、まずはサッカーの楽しさを十分に教えていきたい」 初級部の時期にしっかりとした基礎能力を身に付けさせることは、中・高級部サッカーの発展において重要な位置を占める。初級部、ひいては朝鮮学校全体のサッカー発展のためにも指導教員たちのさらなる奮闘を望みたい。(金明c記者) 小学生同士のワールドカップを 大会を初めて観戦した、サッカー解説などで知られるセルジオ越後さんに感想を聞いてみた。 ※ ※ 23回の歴史のある大会だと聞き、一度見てみたかったので足を運んだ。大会全般の雰囲気が「祭り」のようで、子供たちがサッカーを楽しんでいるのがとても印象的だ。 試合を見て思ったことは、日本の小学生たちがきれいなサッカーをしようとするのに比べ、朝鮮特有の激しさやスピード、ボールに対する執着心などがこの年代から培われているということだ。 これからは日本と朝鮮の子供たちがサッカーでもっと交流を深め、日本で年1回、色んな民族同士で小学生たちのワールドカップを開けたら面白いんじゃないかなと思う。今後もこの大会をもっと発展させていってほしい。 |