同胞の問題、同胞が解決

開設から3年半同胞法律・生活センター/沈植新所長(司法書士)に聞く


 1997年12月1日、東京・上野にオープンした同胞法律・生活センターは、弁護士、司法書士などの同胞専門家を中心に、日本人弁護士らの協力も得て同胞たちのさまざまな問題解決に取り組んできた。開設から3年半になる同センターの新所長に先月、同胞有資格者として初めて就任した沈植司法書士に話を聞いた。

行政にも情報提供

 3年前にオープンしたわが同胞法律・生活センターは、おそらく在日朝鮮人運動史で初めての、在日同胞の問題を在日同胞自身の手で解決する常設的な場所だ。所属団体や国籍などを一切問わず、誰のどんな相談でも受け付ける。先日、訪ねてきた在米コリアン団体の人たちも、こうした場があることに驚いていた。

 センターの業務の柱は、@相談事業A相談員同士の連携強化B情報提供――だと考えている。

 もちろんメインは@の相談事業だ。毎週月曜日に弁護士、水曜日には行政書士や社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーなどが常時待機し、ほかの曜日も随時対応している。開設以来、今年上半期まで受け付けた相談は2839件にのぼり、毎月平均して60〜70件になる。現在、相談員および協力者の数は30人。みな各分野の専門家で、ほかでは解決できない問題を解決できる優秀な人材がそろっていると自負している。

 Aだが、在日朝鮮人人権協会の学習会などを通じて相談員同士の連携を深めているため、専門が多方面にまたがる相談案件でも相談員同士、スムーズに協力、引き継ぎができる。これは相談者にとって大きな利点だと思う。

 そしてBの情報提供。現在、季刊で「センターニュース」を発行しているが、今後、もっとわかりやすく、読みやすくリニューアルし、隔月刊にする予定だ。1都8県の市区町村役場の外国人係や裁判所などに送ってきたが、そのおかげか、センターの知名度はあがり、各地方自治体など日本の行政、国際交流協会などからの問い合わせが増えている。つまり、センターの活動によって同胞たちがよりスムーズに行政サービスを受けられるようになっているという側面もあるのだ。

 今後、リニューアルして、特徴的な相談内容などをわかりやすく紹介し、総聯の各支部などに設けられた同胞生活相談綜合センターにも配布してノウハウを伝え、法律問題における拠点としての役割を果たしていきたい。

 同時に、深刻な就職難などを背景に近年とくに同胞社会でニーズの大きい資格取得の問題について、私たち有資格者にサポートできることがあればやっていきたい。

欠かせない場

 所長を引き受けることになり、今はできる限りとにかくがんばっていこうと思っている。一緒に就任した李順香副所長、専従スタッフと月1回は集まって1ヵ月の業務を総括しその後の対策を協議することに決めた。

 開設以来、いち相談員として運営に関わってきたが、このセンターが同胞社会にとって欠かせない場だとひしひしと感じている。また同胞たちのニーズに立派に応え、役割を果たせたのではないかと自負している。

 センターは、今後も絶対に守り抜き、いっそう強化発展させていかなくてはならない。なぜなら、定住化と世代交替が進み、4世、5世の時代になっても、在日同胞固有の問題はまだまだ存在し続けるからだ。

 まず、行政の窓口や日本の専門家は驚くほどに在日同胞のことを知らない。知らなさ過ぎる。最近、新しい外国人住民が増えてきて国際交流などと言うようになったが、そうなったらそうなったで今度はそうしたいわゆるニューカマーしか見えず、私たちのような歴史的経緯のある在日同胞はまるで存在しないかのようだ。

 しかし、植民地支配によって存在するようになったという歴史的経緯があり、いまだに祖国が分断されていて、その片方とは国交がないという状況の中で暮らす在日同胞には、例えば相続ひとつとってもさまざまな問題が生じてくるケースが多い。その根本問題は、帰化して日本国籍になったところで変わるものではなく、安心して相談できる場所はほかにない。

 われわれにも不可能なことはある。しかし、本来は解決できるはずのことが相談する相手がないために解決できず、権利が守られないということは避けられる。ここにはノウハウも実績もあり、可能な手助けはしてあげられる。

 口コミで評判が広がり、ニューカマーの同胞も多く訪れるようになった。やはり、彼らにとっても適切な相談場所がないのだ。またこの背景には、ニューカマーの定住化が進むにつれ、オールドカマー在日同胞との結婚など、オールドカマーとニューカマーの関係がより深く複雑化していることもあるだろう。もちろん、私たちは幅広く受け入れ親身に相談に乗っている。

 初回無料を原則としているため運営は大変だが、裁判資料の翻訳や手続きのサポートなどの事業を軌道に乗せ、なんとしてもセンターを発展させていきたいと思っている。もっと、どんどん利用してほしい。

センターの相談業務

 開設から3年半を過ぎた同胞法律・生活センター。現在、月曜日には弁護士、水曜日には行政書士と社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーなどが常時待機し、対応している。相談時間は午後1時半から4時半。

 電話、ファクスによる相談は、有資格者が詰めている月、水も含めて月曜日から金曜日までの毎日、午前9時半から午後5時まで受け付けている。専従スタッフが対応し、必要な場合は有資格者に引き継ぐこともできる。

 また先月から、電子メールによる相談の受け付けも始めた(tonpo-soudan@mbi.nifty.com)。随時受け付けているが、電話番号を必ず書き添えてほしいそうだ。

 今年上半期のデータだけ見ても、総相談件数は358件。内訳は、在留資格、金銭貸借、相続、婚姻関係、国籍、保険・年金、交通事故、借地借家、契約保障など多岐にわたっている。

 初回無料、秘密厳守。何よりも、同胞スペシャリストが蓄積してきた実績がものを言う。

 「どんな相談、質問でもスタッフが親身になって対応します」(金静寅事務局長)

 ぜひ、ご利用を。

住所
東京都台東区東上野2―14―10カナオカビル4階

TEL  03・5818・5424
FAX  03・5818・5429

日本語版TOPページ

 

会談の関連記事