閑話休題
2人の画家
高句麗壁画に魅せられて
高句麗壁画に魅せられた2人の画家がいる。1人は南朝鮮の民衆の闘いを精魂込めて描き続けた故李應魯画伯。もう1人は日本画壇の巨匠・平山郁夫画伯(71)。
李画伯は67年の「東ベルリン事件」(KCIAが滞欧朝鮮人70余人を拉致、投獄した)で、2年間の獄中生活を強いられた時も、揺らぐことなく祖国統一を念じ、独裁政権に抗し続けた。 李画伯は終生、パリでの異郷生活を送ったが、訪ねて来る若い同胞芸術家たちにこう説き続けた。「民族の根本を見つめなさい。わが民族が最も栄えた高句麗の壁画に描かれた青龍や玄武の図に溢れ出る力こそが、朝鮮民族の気概であり、世界最高の文化遺産である。我々の芸術の精神もそこに基礎を置くべきだ」と。 一方、旺盛な製作活動の傍ら、世界各地の文化財・文化遺産が民族紛争や自然崩壊により失われつつあることに心を痛め、「文化財赤十字」構想を提唱、実践に尽くす平山画伯。これまでに、6回訪朝、高句麗壁画古墳のユネスコ世界遺産登録の支援に全力を注ぐ。 「長い間憧れてきた高句麗壁画にようやくめぐりあえた時の感動は忘れない」と語る画伯をとりわけ魅了したのは、7世紀に描かれた江西大墓の四神図。「懸腕直筆で一気に線を引く描写力は見事。これまで見た四神図でもっとも優れている。筆力が雄渾であるにもかかわらず、優美であり、造形からしても一級品。墨色の濃淡が時代の味となっており、言い知れぬ効果を出している。…まさに東アジアの貴重な文化遺産である」と。 時空を超えて、民族も国境も越え、私たちの魂をとらえるものは、確かに存在するのだ。(粉) |