本場のウリマル講師に学ぶ
東京朝高 ・ 大阪朝高、朝大でも
生徒たちの質問が相ついだ3年7組の授業(リ・ソノク講師) | 発音や表現の間違いを細かく指摘し、「正しいウリマルを話そう」と話すリ・オクポク講師 |
十分なレベル課題は日常化
朝高に本場のウリマル(朝鮮語)講師がやってきた――。朝鮮の高等中学校でウリマルを教える2人の教師が、大阪朝高(6月11〜23日)と東京朝高(6月26〜7月13日)でそれぞれ授業を行った。民族教育史上初めてのことだ。普段は朝高の教員が担当している国語(朝鮮語)の授業と、日常会話の特別授業を各クラス計5時間ずつ。間違った発音や表現を正し、ウリマルの味のある表現を教える。一方、朝鮮大学校でも朝鮮の講師による、ウリマル、民族音楽の授業とボクシング部、民族器楽部などを対象にした指導が行われた。 祖国訪問でショック 11日の2時限目。東京朝高の3年7組の教室にリ・ソノク先生(35、平壌蒼光第1高等中学校)が入るや、大きな拍手が沸いた。 当初、祖国訪問の日程が重なった3年生のクラスでは授業する予定はなかった。しかし、7月初旬に訪問を終えて学校に帰ってきた生徒たちは校長室を訪ね、授業を受けたいと直訴した。その結果、リ・ソノク先生とリ・オクポク先生(39、平壌チャンジョン高等中学校)が、1日をかけて急きょ全クラスを回ることになったのだ。 高3の生徒たちは本場でウリマルを話す楽しみを味わった直後だけに、学ぶ意欲も旺盛だった。 7組の孫正晃くんは、平壌で金策工業大学に通う従姉妹と会った時、「ウリマルが日本式になっている。考えが日本式だからだ」と指摘され、ショックを受けたという。「10年近く民族教育を受けてきたので、それなりに自信があったのに。通じるウリマルを使いたいと思った」。 そこで、孫くんは質問した。「日本式のウリマルを直すにはどうすればいいのでしょう?」 リ・ソノク先生は、発音の違いと語い数の不足を克服することを助言した。 「とにかく学校や家でたくさん話すこと、また、本を読むことです」 また、「학교」のように「フ」のパッチム(終声となる子音)を強調すべきなのに「匸」に聞こえるなどの具体的な事例をあげながら練習を繰り返させた。 やらせてみると、難なく発音できる生徒たち。しかし、生活の場で使わず、普段意識しないので、身につかない。これが問題のようだ。 「日本語の支配」 リ・オクポク先生が担当したクラスでは、祖国訪問の話で花が咲いた。 「同じ民族がわずか数十センチの線で隔てられ、話も出来ず…」。リ先生に板門店に行った感想を聞かれたある生徒は、その時の心情を表現する場面でつまずいてしまった。 「ソクサンヘッタ(心が痛んだ)、アンタカワッタ(悔しかった)、マウミ チョリョタ(胸が締めつけられた)…」。リ先生の口から発せられる単語に、わが意を得たかのように言葉をつなげた。 「プンダネ ヒョンシル アンタカプケ ヌキョッスムニダ(分断の現実に胸が痛みました)」 単語を知らない訳ではない。しかし、すぐには思い出せず、口に出ない。ウリマルが生活の一部になっていないのだ。 リ・ソノク先生は、朝高生のウリマルについて「意思疎通に問題はない。むしろ、これだけのレベルを維持していることに感動した」と評しながら、今後の課題として次の点を指摘する。 「生徒たちは、学校の一歩外を出れば周囲がすべて日本語という『環境の支配』を受けている。学校と家庭、同胞社会が協力し、ウリマルを使える場を広げる必要があるでしょう」 教員の授業も診断 大阪と東京の両朝高では、教員たちの「ウリマル診断」も行われた。東京朝高では、2人の講師が授業を参観し、教員の発音、抑揚、速度、また語尾に「ねー」などをつける日本語式の言葉使いをチェックしながら、実態と傾向を分析。その内容をまとめ、都内の全教員を対象に講義した。 このたびの授業は1世の減少、世代交替が進む現状から、「本場のウリマルを聞かせる必要がある」と、現場の教員や保護者が要望し、実現した。今後も研究を深め、毎年続けていく。(張慧純記者) |