ブッシュ政権の独善に内外で強まる非難

「テロの脅威拡散は事実無根」


 ミサイル防衛計画(MD)の強行や京都議定書への反対など、ブッシュ政権は、発足当初から自国の利益のみを追求するユニラテラリズム(一国主義)への道を突き進んでいる。14日に敢行された太平洋上でのミサイル迎撃実験、MD構築のため大陸間弾道ミサイル迎撃ミサイル(ABM)協定および包括的核実験禁止条約(CTBT)破棄の方針決定、G8の依頼で作成された環境問題に関する勧告案への反対意志の表明など、米国は世界と歩調を合わせるどころか、時代に逆行しているといっても過言ではない。このようなブッシュの独善的な行動は、世界各国からはもちろん米国内からも批判を浴びており、ひいては父親のブッシュ元大統領も憂慮を示している。

反米共同戦線

 ロシアのプーチン大統領と中国の江沢民国家主席は15、16の両日、モスクワで会談を行い、両国が引き続き戦略的パートナー関係を構築していくことで一致した。江主席は今回締結された中・ロ友好親善協力条約について、「長期的に安定した両国関係を築くうえで欠かせない土台となる歴史的な重要性を帯びたもの」と強調した。両首脳は会談で、米国による「一極支配体制」からロシアとの協力に基づいた「多極化体制」構築を目指すことでも合意するとともに、米国による今回の迎撃ミサイル発射実験が、ABM協定に違反するとして追加実験の中止を要求した。

 それに先立つ2日には、ロ・仏間で戦略的安定化に関する共同宣言が採択された。共同宣言では「冷戦以後に形成された現在の国際情勢下では、戦略的な均衡を保つことがとても重要」としながら、「新たな競争を引き起こしかねない新システムが既存のメカニズムに取って代わることがないようにしなければならない」と指摘した。

 英国のストロー外相も訪米中の11日、MD体制構築のための米国によるABM協定破棄方針に対する不支持を表明した。3日には英国のヨークシャー州で、グリーンピースの会員およそ100人がMD抗議デモを行い、ブッシュは英国内の2つの基地内にMDの前哨基地を設置しようとしているとしながら、「しかしブレア首相の許可なく設置できるものではないし、ブレア首相がブッシュに服従しないこと」などを要求した。

 一方環境問題でも、ヨーロッパ主要国の首脳は20日から開かれるG8首脳会談で、ブッシュ大統領に米国の政策に対するEUの失望感を示しつつ、地球温暖化防止問題などで米国の積極的な協調を促していく方針だ。

目に余る独善ぶり

 ブッシュ政権に対する米国内の評価もまた厳しい。

 米国務省のテロ対策専門家として活動したラリー・ジョンソン氏は10日、ニューヨーク・タイムスに寄稿した「減りつつあるテロの脅威」という一文で、テロの脅威が少しずつ拡散しているというのは事実無根であり、「政府当局が『テロの脅威』をMD構築や、アラブ系米国人らの権利を侵害するために悪用している状況を再考しなくてはならない」と指摘した。

 また、11日付のニューヨーク・タイムスは社説で、米国政府が「小型武器不法取引に関する国連会議」で採択される予定の行動計画を支持しないことを表明したのは、「外交を国内の政治的目的に従属させた厚顔無恥な行動」として激しく批判した。同紙は会議での国務次官の発言は、小型銃火器の不法取引抑制のための広範囲な国際協力へと向かおうとするわずかな推進力さえも停滞させた可能性があると政府を非難した。

 米国の経済専門通信であるブルームバーグは、ブッシュ就任後5ヵ月の株価下落率が10.8%で、第2次大戦後2番目の下落率であることを明らかにした。経済成長率は1/4分期で2%、失業率は4.5%にも上った。大統領の支持率と株価が正比例する米国では、この数字がブッシュに対する支持率の低さを十分に示しているといえる。

 国内外の非難にもかかわらず、ブッシュ政権はいまだ一極支配の夢を捨てていないようだ。米国に冷戦思考はすでに前世紀の遺物で、21世紀は協力と和解に基づいた多極化の世紀だと気づかせるにはさらなる国際的協調が必要となる。

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