取材ノート

具体的な実践≠


 同胞障害児とその家族をつなぐ「ムジゲ会」が結成された、大阪、兵庫を訪れ、当事者の話を聞いた。会ったのは数人だが、抱えている問題の深刻さにがく然とする思いだった。

 「大阪ムジゲ会」のある会員の子供は自閉症。来年から学校に上がる年齢を迎え、就学問題で頭がいっぱいだ。「民族教育を受けさせたいが、障害の重さや、朝鮮学校が置かれた窮状からどうしていいのか方法を見いだせない」。同じ悩みを抱える友人が2、3人いるという。

 軽い知的障害がある子供を朝鮮学校に通わせている「兵庫ムジゲ会」の会員は、現在は通学バスで通っているが、高学年になって電車通学をできるかという心配から、今後の高等教育、社会人になった後の就職問題、他の兄弟に対する心のケアについて不安を吐露していた。

 昨年から各地域では、障害者を支えるネットワークができつつある。つながりができた今こそ、その要望を汲む「具体的な実践」が同胞組織に問われている。

 「1人で悩んでいる人はまだ多い」と話すのは大阪と兵庫の両会長。様々な機会を通じて会の存在を知らせているが、対象となる同胞が会の存在をまったく知らなかったり、知っていても、様々な理由から参加を見合わせるケースが多いという。

 足が遠のくのは、同胞社会に根強く残る偏見、無知と無関係ではない。障害児とその家族は周囲の心ない発言に傷を負っているからだ。

 偏見の根は深いが、時間をかけてでも取り除く必要がある。そこで組織にできることは、朝鮮学校や、地域の集まりを通じて偏見を取り除くことだ。

 改めて障害者やその家族の願いを実現するためには、彼らの話を聞くことが出発点だと思った。

 耳をかたむけ、想像力をかきたてる。そこから「実践」が見えてくるはずだ。
(張慧純記者)

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