日本の右傾化は東アの脅威
歴史教科書わい曲、国籍取得緩和同胞学者ら反対表明
「新しい歴史教科書をつくる会」の中学歴史教科書検定合格とアジア諸国からの修正要求拒否、小泉首相の靖国神社公式参拝意思表明、「権利が欲しければ日本人になれ」と言わんばかりの特別永住者に対する国籍取得緩和法案――。日本の右傾化を憂慮し、在日同胞学者らが7日、東京で討論集会を開いた。参加者らは、「つくる会」の教科書が採択され学校現場で使用されることに反対し、日本政府が欺まん的な「国籍付与」策動を中止して旧植民地出身者をはじめ一般定住外国人の人権を十全に保障するよう求めるアピールを採択した。
「民族浄化」のためのツール 作家で東京経済大学教員の徐京植氏は、「過去の侵略を反省せず、若者への歴史教育に真剣に取り組まず、他者との対話と相互理解のための努力をしない日本が、国家主義的傾向をさらに強め、憲法9条の改廃を公然と論議し始めている姿は、アジアの諸国民から見れば恐怖の的でしかない。日本こそが、東アジアの、ひいては世界の平和にとって重大な脅威だ」と述べた。 さらに「国籍取得緩和法案の本質は権利問題ではない。侵略と植民地支配の生き証人である在日同胞を整理し、国民という枠組みで『民族浄化』しようとの意図の表れであり、そのためのツールが歴史教科書だと言える。今、徹底的にたたかわなくてはならない」と警告した。 朝鮮大学校教員の韓東成氏(哲学・政策論)は、歴史わい曲教科書問題に対して北南の学者や労働者、農民などの団体が分断史上初めての共同歩調を取っていることを紹介。その背景として、6.15共同宣言以後の民族自主統一への北南関係の質的変化はもちろん、日本の右傾化が統一への脅威になるとの共通認識があると指摘。「東アジアの緊張要因は朝鮮ではなく、米と危険な同盟を結びながら右傾化する日本だ」と強調した。 恵泉女学園大教員の李省展氏(朝鮮近代史・朝鮮キリスト教史)は「つくる会」の歴史、公民の両教科書を具体的に検証しながら、「朝鮮を仮想敵国とみなして緊張感を作り出し、平和憲法を改定して集団的自衛権を行使してゆくゆくは日本国軍を創出するという、戦後民主主義の書き換え作業が進んでいる」と指摘。国籍取得緩和法案についても「共生へのメッセージがない社会制度のもとで国籍を取っても、アイヌのように(その民族性が)無視され続けていくという事態になりかねない」と警鐘を鳴らした。 歴史的存在としての原点 朝鮮大学校教員の任京河氏(民法)は、国籍法取得緩和法案について「65年の韓日条約の時には南か北かという踏絵を踏ませ、今回は日本か朝鮮(韓国)かという踏絵を踏ませようとしている」と述べたうえで、この問題を考えるためには、1952年のサンフランシスコ講和条約発効にともなう「国籍はく奪」ではなく、強要された日本国籍という意味で1910年までさかのぼって考えるべきだと主張した。そしてやはり、周辺事態法や憲法改定への動き、「国旗・国歌法」、「つくる会」教科書など一連の右傾化の動きが法案の背景にあると指摘した。 「指紋カードをなくせ! 1990年協議会」の金静伊氏は、「国籍法取得緩和法案を法理論的な見地からや諸外国の例などから見て反対できないと主張する人もいるが、われわれ在日同胞の存在自体が19世紀的な国家観や法律論的なもので整理できるものではない。在日同胞の歴史的経緯と、日本政府の一貫したやり方から見ると、権利だとありがたがるのは愚かなことだ」と主張した。 一橋大学博士課程の慎蒼宇氏(朝鮮近代史・軍事警察史)は、現在の右傾化の中で保守層が取っている、外国人を分断する戦略――「国益」に適う者は「包摂」、そうでない者は「排除」――について、石原慎太郎・東京都知事を例に説明。「包摂」されている例として、在日の内実はすでに日本人と変わらないので帰化すべきだと主張する鄭大均氏らをあげ、解放前の「親日派」知識人の言説との類似性について指摘し、批判した。国籍法取得緩和法案についても「この法案が通れば、在日同胞の選択肢はむしろ狭まる。かつて『日本人だったから』というが、植民地時代、朝鮮人は本当に日本人だったと言えるのか。国籍は強制されたものだったのではないだろうか。歴史的存在としての原点を忘れてはならない」と述べた。 |