神戸朝高生徒、老人ホームでボランティア活動
「ありがとう」大喜びの入所者
「孫のよう」朝高生と楽しそうに話す入所者ら | 洗たくに出すシーツをまとめる |
神戸朝鮮高級学校(神戸市、崔在鳳校長)の生徒50人が6月30日、毎月1回、土曜日に行っている課外活動の一環として、同校の近所にある特別養護老人ホーム「ファボール星陵」でボランティア活動をした。こうした取り組みは、各地の他の朝鮮学校でも行われている。
◇ ◇ 2003年度から朝鮮学校では隔週土曜を休みにし、登校する土曜日は課外活動にあてる。全面実施に向けた移行措置として、各学校では昨年度から月1回、土曜日に各種の課外活動を行っている。 この日行われた神戸朝高の課外活動は自由テーマ研究。生徒たちのアンケートによって選ばれた映画観賞、料理、日曜大工、アウトドアなどの16のコースからなり、希望するテーマを選択させた。ボランティアは料理とともに希望者の多いコースで、女生徒が大多数を占めている。 午前9時。施設に集合した生徒たちは初めての体験ということで、少々緊張気味だった。 「なんでボランティアを選んだの?」との質問に、崔景仙さん(高2)は「一緒に住んでいるハルモニ(祖母)が大好きだから。将来は福祉関係に進みたい」と答えた。 「入所者さんは普段単調な生活を送っておられますので、若い皆さんを見たら孫に会ったかのように喜ばれます。元気をつけてあげてください」―。施設の職員の指導を受けながら、生徒たちはシーツやお茶の交換、掃除などの担当別に仕事に取りかかった。 「こんにちわー」。元気いっぱいにあいさつしながら部屋へ入る。シーツを取り替えるため、ベッドで寝ている入所者を車イスに乗せ、食堂へ移動。車イスを扱う練習は学校で2回行ったが、実際に高齢者を乗せるのは初めてのことだ。 練習とは違って、思うようにいかない。表情は緊張で張り詰め、動作も硬い。しかし、「ありがとう、お世話になります」と何度もお礼する入所者を前に、会話も増え、笑顔も出てきた。 ◇ ◇ 食堂では、作業を終えた生徒たちが入所者を囲んで楽しそうに話していた。孫や子供の話、遠く離れた故郷への郷愁…。看護婦志望の盧有洙さん(高2)は、「訪ねてくる家族も少ないのだろう。こんなにも喜んでくれるなんて思いもしなかった。話を聞いてあげることが一番大事だと思った」と話す。 職員から普段の仕事ぶりや入所者の様子を聞き、厳しい介護の現場に想像力をめぐらす生徒もいた。 終了時間が迫るや、入所者の1人は別れが惜しいのか、エレベーターの前で固く握った生徒の手をなかなか放さない。 「また、来てや、絶対な」。目には涙が光る。 その姿に「毎日でも来たい」と李和実さん(高2)。 「すっごく楽しかった。みんな心を開いてくれたから」 ◇ ◇ ファボールは昨年1月に建設された特別養護老人ホーム。施設内の掲示物などの一部は日本語とハングルの両言語で書かれている。「朝鮮人も安心して入所できる施設を目指した」という杉森昭生施設長の考えによるものだ。 「地域から国や民族の壁をとっぱらいたい」という杉森施設長は、作業を終えた生徒たちを前に、「高齢者を支える具体的な支援をすることがボランティアの最終目標だと思う」と述べ、「高齢者福祉を支える人材に育ってほしい」との期待を語った。 8月4日には施設の夏まつりが行われる。生徒たちはそこで朝鮮舞踊や吹奏楽の演奏を披露し、入所者を喜ばせたいと目を輝かせていた。 |