平山郁夫氏の展覧会「高句麗今昔を描く 平山郁夫」展

高句麗壁画古墳群の世界遺産登録を支援


 日本画家でユネスコ親善大使の平山郁夫さん(71)の展覧会「高句麗今昔を描く 平山郁夫」展(NHK、朝日新聞社など主催)が、4日、東京・日本橋高島屋で始まった。これは「古代日本と深いつながりをもつ高句麗壁画古墳群は人類と東アジアの貴重な財産」という思いで、ユネスコへの文化遺産登録に協力しようとするもの。本展示には、3年半にわたって描きためたスケッチ78点と本画5点が出品された。収益金は壁画の保存修復基金などに充てられる。

 高句麗壁画古墳は、高句麗時代(紀元前3〜7世紀)に造られたもので、平壌郊外に約90基が点在する。平山画伯は97年以来、これまで6回訪朝。代表的な高句麗古墳壁画の江西大・中墓、安岳3号墳、水山里古墳など9基を視察した。

 平山さんによると世界遺産登録に関する作業は、2000年4月に仮申請が終わり、現在、本申請が行われており、今年末には、正式に登録される見込み。これまで、世界遺産に関わる支援のために、申請に必要な調査のための温湿測定器やビデオカメラ、パソコン、車両などを提供してきた。

 そのかたわら、朝鮮民主主義人民共和国の人々や暮らし、古墳壁画と古代日本の深い関わりについて日本の人々に深く知ってほしいと、共和国内の旅を精力的に続け、スケッチを描いてきた。古墳の全景や壁画の躍動する四神図、平壌市内の七星門、チュチェ思想塔、高麗の都、開城の南大門や世界最古の大学として名高い成均館などをスケッチし、ユネスコの文化・自然遺産に考えられている妙香山普賢寺でも大雄殿などを描いた。また、共和国の今を生きる人たちにスポットをあて、オペラ歌手や女優の人物画のほか、苗が美しく育つ5月の田んぼや刈り取りの後の田園風景もスケッチした。

 今回の展覧会では、画伯の代表作でもある「卑弥呼擴壁幻想」(1967年、院展出品)も合わせて展示されたが、これこそ、平山画伯と高句麗古墳壁画を結びつけた縁のある作品。

 「これは邪馬台国の女王・卑弥呼の墓がもし存在していたら、こんなイメージになるだろうと想像し、幻想的な世界を描いたもの。当時、この作品を描くに当たって、高句麗壁画を研究し、卑弥呼を描く際には水山里古墳壁画の女性像を参考にした。卑弥呼の衣装はフレアーのついたチマ・チョゴリ姿とし、背景を描く時にも高句麗壁画の樹木などを描いた」と画伯自身が吐露するほど高句麗壁画にこだわった名作である。そして、それから5年後の72年、偶然にも、高句麗壁画の強い影響を受けた高松塚古墳が発見され、その模写班の責任者に平山画伯は就任する。展覧会では画伯の「高松塚壁画模写」も展示される。

 平山画伯の高句麗壁画に寄せる熱い憧れと文化財保護に寄せる切々とした思いが作品すべてに脈打っている。

 「古代日本のあけぼのに、今の朝鮮民主主義人民共和国の故地、高句麗にたいへんお世話になった。わが国初の仏教寺院・飛鳥寺の初代管長となった僧・慧慈は高句麗から渡来し、聖徳太子の外交顧問として、国家建設に大変にご尽力を頂き、さらに飛鳥大仏の造立に黄金300両が、高句麗から推古天皇にお祝いとして届けられたと日本書紀に記載されている。このような日朝の悠久の歴史の地に、親戚ともいえる朝鮮からの代表団をお迎えできることは、感慨深いものがある。高句麗壁画のユネスコ文化遺産登録に協力するうえで役立ち、さらには東アジアの平和と南北朝鮮の統一への祈りをこめて展覧会を開催できたことは本当にうれしい」と画伯は心からの喜びを語った。
(朴日粉記者)

開催案内

  ◇会期・会場=4日〜17日。午前10時〜午後7時、最終日は午後4時まで。東京・日本橋の高島屋8階ホール(TEL  03・3211・4111)、会期中は無休、入場料=一般800円(600円)、大学・高校生600円(400円)、中学生以下無料。()内は20人以上の団体料金。

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