6月に結成、大阪ムジゲ会
(障害者とその家族のネットワーク)

理解と協力広げたい/不可欠な同胞社会の支援

中大阪初中で開かれた「大阪ムジゲ会」発足の集い。府下の同胞110人が参加した 2部の焼肉パーティー。全会員が自己紹介し交流を深めた

 同胞社会において、障害者問題への理解と協力を広げる取り組みが各地で広がっている。5年前、全国の同胞を対象に家族同士の親ぼくをはかる「ムジゲ会」(申桃順会長)が結成されて以来、昨年10月に愛知、12月に広島、今年に入っては兵庫、大阪、山口・下関、千葉など地域ごとにムジゲ会が結成され、ネットワークが広がりつつある。全国の都道府県で在日同胞が最多の大阪府では6月2日に「大阪ムジゲ会」が結成された。(生活・権利欄に関連記事)

契機は「ムジゲin大阪」

 結成のきっかけは昨年8月、大阪で開かれたイベント「ムジゲin大阪」だった。障害者とその家族の交流を目的に「ムジゲ会」が主催したもので、全国から160人の障害者とその家族が集まった。

 「こんなにたくさんのチョソンサラム(朝鮮人)の障害児がいるなんて」。2人のオモニを誘ってイベントに参加した会長の徐貞子さん(49)は「その数にびっくりした」。

 大阪からは障害児を抱える5世帯の家族が参加、そこでの出会いを機に、1ヵ月後から月1回の「お茶会」が始まった。「せっかく知り合ったのだから同じ悩みを持つ親同士、会ってストレスでも発散しよう」と、金東子さん(58)が呼びかけたのだ。

 子供の障害や治療方法、行政との交渉、朝鮮学校で学ばせた経験、就職問題…。毎回の集まりでは話が尽きなかったという。

 会を重ねるうちにもっと多くの同胞が参加できるように、と場所や時間を工夫したところ、参加者も徐々に増え、対象となる他の同胞の情報も集まってきた。今年に入ってはアボジ同士の集まりも開催された。

悩みは山積み

 徐さんの次男、朴用秀くん(7)は疾直性四肢マヒ(起立マヒ)。自分の足で立てず車椅子の生活だ。

 徐さん夫婦は用秀くんを朝鮮学校に通わせたかったが、障害が重いため、近所の大阪市立長橋小学校に入学させた。同校は障害児教育が比較的充実しており、民族学級も設置されていたからだ。

 しかし、入学から1ヵ月後、本名を名乗っている用秀くんはクラスメートから「韓国人だからいじめたる」という罵声を浴びせられた。小学校1年生の口から発せられた差別発言。「明らかに親の意識が反映されたものだった」(徐さん)。

 「障害者とその家族が日本社会でチョソンサラムであることを隠さず、生きていくのは本当に大変なこと。同胞社会にも少なからぬ偏見がある。また、子供の成長とともに新しい問題が出てくるし、ほかにも兄弟へのケアなどつねに悩みは山積している。たとえその悩みをすべて解決できなくとも、ひとつずつよい方向に持っていけるよう、皆で考えていきたい」

会報発行、勉強会

 「大阪ムジゲ会」は、障害児とその家族の連帯と親ぼくを深め、同胞社会で障害者問題に対する理解を深めるため今後、月1回の集まりを定例化しながら、会報の発行、勉強会、行政への要望などの活動を進めていく。

 現在、会員は13世帯。障害者もすでに成人した人から就学前の子供まで幅広い。よって会員の関心も様々だが、就学前の障害児を持つ会員は子供の学校問題で頭を痛めている。事務局長の文淑恵さん(35)もその一人。自閉症の障害を持つ娘が来年から学校だ。

 「できれば同胞の中で学ばせたいが、娘の障害は重い。ウリハッキョの窮状も理解できる。入学できなくとも、朝鮮学校と触れ合う機会を作れないだろうか…」

 文さんは、まず、総聯や朝鮮学校が障害児の教育問題を相談する窓口を設けて欲しいと話す。「養護学校、日本学校、朝鮮学校…、どの選択が子供の成長にとって一番いいのかを相談したい。行政の窓口に行っても、民族教育を望むわれわれの思いはなかなか理解されないから」。

 課題は多いが、障害者問題に対する関心は確実に広がっている。中大阪初中で開かれた「大阪ムジゲ会」の結成の集いには110人の同胞が参加、府内の朝鮮学校教員がボランティアを担当した。ちなみに昨年の「ムジゲin大阪」には、府下の女性同盟、青商会、朝鮮学校教員と生徒らがボランティアとして参加している。

 「会を立ち上げたからには、会員の願いを一つでも多くかなえたい。そのためには組織、同胞社会のバックアップが不可欠です」(徐会長)
(張慧純記者)

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