取材ノート

重要な「今」を知ること


 金正日総書記と金大中大統領の歴史的な対面、そして6.15共同宣言から1年が過ぎ、同胞社会で様々な記念行事が行われている。7日の土曜日には、社会科学者協会主催のシンポジウムが4人のパネラーの出演の下、開かれる。

 筆者も、長く政治、軍事、統一問題の研究、分析に力を注いできた先輩たちに混じって末席に名前を連ね、この間の経済協力、交流の現状、展望について報告することになった。

 それに先立ち、1年間の流れをどう見るのか、レジュメ作りに生かすための意見交換を兼ねたパネラーの準備会を持った。

 その場で焦点となったのは、6.15以前と以後を切り離すべきなのか、継続性の中でとらえるのか、ということだった。

 6.15共同宣言は「統一の里程標」、つまり道標だけに当然、新次元の認識が必要なのだが、いざ論議になるとその認識が言葉になって出てこない。過去の呪縛(じゅばく)から、自らを解き放すことの難しさを改めて思い知らされた。

 この1年間、本当にわれわれを取り巻く状況は根本的に変わった。象徴的な事実として、総聯同胞故郷訪問団の存在がある。

 昨年9月から数えて、今回の6月で4回になったが、結成以来46年の歩みを背にしながら、堂々と生まれ故郷の土を踏み家族、親族たちと血が一つであることを確認し合った。一過性の出来事ではないだけに、1世たちは新たな人生のスタートラインに立った思いだろう。

 朝鮮半島全体を見ても、半世紀余の分断の空白を埋めようと往来、交流が頻繁である。そのことが何を意味しているのか――、共同宣言に立ち戻って確認し、また事実を見る。その反復作業の中で、統一に向かう今の位置をつかむことができる。

 思考の切り替えは前提だが、今をしっかりと知ることが重要だと思う。(厳正彦記者)

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