「新しい歴史教科書」に対する

「従軍慰安婦」・太平洋戦争被害者
補償対策委員会の評価−<下>


 1868年の「明治維新」後に台頭した「征韓論」で、「天皇国家の威力」を高めるためには武力で朝鮮を征服して日本に従属させるべきとの侵略的野望をむき出しにした日本は、朝鮮に対する侵略の触手を伸ばし始めた。

 1875年に「雲揚号」事件を起こし、それを口実に1876年には「江華島条約」(朝・日修好条約)を強要し、1904年には露日戦争を機に10万の精鋭兵力を朝鮮に送り武力で占領した。

 朝鮮を軍事的に占領した日本帝国主義は、それを「合法化」するため「条約」のねつ造を始めた。

 日本帝国主義は強力な軍事力を背に1905年「乙巳五条約」をねつ造して朝鮮の外交権を強奪し、1907年には「丁未七条約」を作りあげて朝鮮の内政権を奪い取り、当時1万人にも満たなかった朝鮮軍まで解散させた。

 こうして、強力な軍事力を支えに朝鮮の主権をこうかつに奪い取った日本帝国主義は1910年、「韓日併合」という名で朝鮮占領を内外に公式に宣言した。

 日本帝国主義は朝鮮占領後、権力不分立、軍部独裁を朝鮮統治の基本方式に定め、天皇の勅令によって日本の陸海軍の大将を朝鮮総督として派遣し、朝鮮において総督を最高頂点とするピラミッド型の権力支配体系を打ち立て、朝鮮人民への植民地軍事ファッショ統治を実施した。

 朝鮮人民は、44年間にわたる日本帝国主義の植民地軍事ファッショ統治のもと、あらゆる民族的べっ視と虐待を受け、日本の法律に服従するか、それとも死ぬかという筆舌に尽くしがたい精神的屈辱と侮辱を受けなければならなかった。

 当時、日本帝国主義者は朝鮮の言葉と文字、朝鮮人の姓名までも強制的に奪い取るなど民族的なすべてを抹殺しようとし、朝鮮人民に民族の魂を捨てて「皇国臣民」として日本の「天皇」に「忠誠」を尽くすよう強要した。

 さらに朝鮮占領の全期間にわたり、軍権と官権を動員して中世期の奴隷売買を思わせる野蛮な方法で、当時の朝鮮の青壮年労働力のほとんどである600余万人をら致、強制連行して、アジアおよび太平洋戦争で消もうする兵力、労働力にあて、人間以下の奴隷労働を強要し、100数10万の罪なき住民を虐殺し、およそ20万のうら若い女性を日本軍の性奴隷にするなどのばく大な人的被害を与えた。

 また、朝鮮人が創造し先祖代々にわたって受け継いできた数10万点の貴重な国宝や文化財、ばく大な量の天然資源や一切の生産物を略奪し、戦争に利用できるものであれば人民のし好品や生活道具までもすべて奪っていった。

 われわれが調べた資料によれば、日本帝国主義が朝鮮から略奪していった金は400余トン、木材は3000余万立方メートルであり、コメや鉄鉱石、鋼材、鉛、亜鉛、マグネサイトなど各種の資源はその数量を推し量ることもできない。

 このように、日本帝国主義の軍事的占領期に朝鮮人民が受けた精神的、物質的、人的被害は、その期間と形態、方法と内容、範囲において、人類史に例を見ない最大、最悪のものだった。

 朝鮮人民は、決して日本帝国主義の植民地軍事統治をただ座して甘受したのではなく、日本帝国主義が武力で朝鮮を占領した初日から義兵闘争と独立軍闘争などで反日抗戦に臨み、さらに1930年代初頭からは白頭山を中心に国内外の広範な地域で強力な抗日武装闘争を組織、展開して、日本帝国主義に甚大な政治的、軍事的打撃を与え、祖国光復の歴史的偉業を成し遂げた。

 しかし、「新しい歴史教科書」ではこのような史実についてはほとんど触れず、「韓国併合は日本の安全と満州の権益を防衛するために必要であると考えた」などと書きたてている。

 同教科書はまた、朝鮮に対する米帝国主義の武力侵攻による朝鮮戦争についてもねじ曲げて記述している。

戦争責任回避し軍国主義注入

 第3に、戦争犯罪に対する責任を回避して侵略戦争を賛美しつつ、軍国主義思想を注入するための教科書であるということだ。

 古代と中世、近世の部分も同様だが、現代史の記述は、直接的に日本の戦争犯罪に対する責任を回避し、次代を新たな侵略戦争へとけしかける内容で貫かれている。

 まず、日本のいわゆる「地位と役割」、「大国」としての「使命」を意図的に強調しつつ、「侵略戦争」を「解放戦争」としてねじ曲げて描いていることをあげられる。

 教科書は、露日戦争が「世界中の抑圧された民族に、独立への限りない希望を与えた」、またその結果、「日本は、世界列強の仲間入りを果たした」と記述している。

 さらに、「満州事変は、日本政府の方針とは無関係に、日本陸軍の出先の部隊である関東軍が起こした戦争だった」とし、太平洋戦争を挑発した日本の戦争目的が「自存自衛とアジアと欧米の支配から解放し、そして、『大東亜共栄圏』を建設」することであったとして、戦争責任を回避し侵略戦争を賛美した。

 朝鮮占領時期の蛮行は言うまでもなく、中日戦争時期に中国で強行した1000万人以上に達する虐殺蛮行、南京事件、数100万人に達するベトナム、ビルマなどの女性を日本軍の性奴隷にした人類史上その類例を見ない反人倫的犯罪である日本軍「慰安婦」犯罪に対する記述さえすべて削除し、東京極東軍事裁判を否定し、日本の戦争犯罪に対する責任を回避した。

朝鮮への反感、敵対感吹き込む

 第4に、朝鮮に対する反感、敵対感を吹き込む教科書であるということだ。

 このたび、日本当局が承認した「新しい歴史教科書をつくる会」の「公民」教科書は、わが国固有の領土である独島を日本の領土として示した地図を掲載したかと思えば、わが国が1998年に打ち上げた最初の人工衛星について、「テポドン(ミサイル)の発射」だと事実をねじ曲げ、反朝鮮感情をあおっている。

 私たちは、過去600万の朝鮮青壮年と20万の若き女性をら致、連行して苦役を強いて酷使し、日本軍の性奴隷にしたにもかかわらず、次世紀となった今なお謝罪と補償を行っていない加害者である日本が、わが国の尊厳を傷つけ、被害者になりすまそうと教科書の内容までねつ造していることに、憤激を抑えられない。

 以上のように、日本当局が承認した教科書は歴史的事実をはなはだしくわい曲、ねつ造して他民族に対する日本の「優位性」を吹き込み、植民地支配と侵略戦争を賛美し、日本帝国主義の過去の犯罪を美化粉飾する国粋主義と他民族べっ視思想、軍国主義思想で貫かれている。

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