現場から−李久美(兵庫ムジゲ会会長・45)

孤独、寂しさ いやしたい

障害者と家族をつなげる


 障害児を抱える保護者たちが集う「兵庫ムジゲ会」が結成されたのは5月14日。きっかけは昨年8月、大阪で開かれたイベントでした。5年前に結成された心身障害者を抱える家族のネットワーク組織、「ムジゲ会」が「ムジゲin大阪」と題し、全国から障害児と保護者たちを集め、交流イベントを開いたのです。

 兵庫県からも私を含め4人の保護者と、総聯の兵庫同胞福祉問題協議会の事務長、部長、元朝鮮学校教員の方々が参加しました。その方々が後日、私を訪ねて来て、「障害者の問題を真剣に考えている。自分たちと一緒に兵庫でもムジゲ会のようなものを作ろう」と呼びかけてくれたのです。

 全国組織である「ムジゲ会」は、関東を中心に45家族が会員となっています。私も「ムジゲ会」を知って以来、各地のオモニたちと連絡を取り合っていますが、彼女らが頑張る姿を見ながら、兵庫でも何か始めなければと思っていました。しかし、1人では知恵が浮かばず、行動する勇気も出ませんでした。そんな時、手伝ってくれる人が現れたのです。

 光が差し込んだ気がしました。

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 それから福祉協議会の事務長らとともに、会の結成に向けて動き出しました。まず姫路、神戸、尼崎の各地域別に連絡会を作ることにし、対象となる保護者たちに連絡して趣旨を話しました。

 また、福祉協議会では総聯の活動家の間で障害者問題に対する関心を喚起しようと、今年の3月に講演会を開きました。講師を務めた私は、息子を育てながら感じてきたことを率直に話しました。

 今年20歳になる息子は、生後1ヵ月目に風邪にかかった時、病院でもらった薬が原因で呼吸が止まって脳に酸素が行かなくなり、知的障害が残りました。今でこそ医療ミスが社会問題になっていますが、その時はまさに泣き寝入りの状態でした。

 その時、「ムジゲ会」のような組織があれば、総聯が目を向けていれば、病院を相手に裁判も起こせただろうし、私ももっと楽になれただろうと話しました。

 また今後、朝鮮学校が障害児教育に真剣に取り組み、担当の養護教員を配置するなど、責任ある対応策を講じて欲しいと提起しました。また、知的障害者に関する医療費の規定や行政のサービスに無知だったことから、長年、高い医療費を払い続けていた経験も話し、総聯が情報提供などの役割も担って欲しいと訴えました。

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 姫路で連絡会を結成した時、感きわまって泣き出してしまったオモニがいました。おそらく今まで泣くことすらできなかったのでしょう。同じ痛みを共有する同胞がいるだけで、孤独、寂しさがどんなにいやされるだろうかと思います。とにかく今の私に出来ることは会に参加したオモニ、アボジたちの話を聞いてあげることです。

 1人で悩んでいる人たちは、まだたくさんいます。彼らをつないでいくことが、障害者に優しい同胞社会を作る第一歩だと思っています。

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