取材ノート

在日朝鮮人は介入するな


 「在日朝鮮人は日本の教科書に介入するな!」

 何かに取りつかれたような表情、熱気を帯びているのにどこかうつろないくつもの目がこちらを見ていた。その口から吐き出される激しい怒号…。

 11日、「歴史わい曲教科書を許さない!  アジア連帯緊急集会」が開かれた都内某会場の入り口付近は、異様な雰囲気に包まれていた。集会には、アジア各国から日本軍性奴隷被害者や市民団体代表らが多数参加したが、入り口で怒号を飛ばすのは、こうした人々の存在が見えない(見ようとしない)者たちだ。

 激しい雨の中、混乱を防ごうと警備に立つ警官の多さで、数100メートル離れた地下鉄の駅からでも騒ぎのもとが分かった。おかげで会場をすぐに見つけることができたが、入り口付近は騒然としていてどこから入っていいのかもよく分からない状態。やっと人波をかき分け、怒号に目を伏せながら進む他の参加者たちについて中に入っていった。

 怒りよりも悲しみに似た気持ちになった。論理的に対抗するのが無意味な相手による明らかに理不尽な攻撃。無視するのが一番だと思うが、「在日朝鮮人」と名指しされると思わず悔し涙が出そうになる。

 記者はずっと朝鮮学校で育ち、面と向かって日常的な差別を受けた経験は少ない。比べものにならないかもしれないが、「朝鮮人は出て行け」と言われ、チマ・チョゴリの制服を切られた友だちや後輩はきっとこんな気持ちだったのでは、と思いをめぐらせた。「私はここにいてはならないのか」という一種の疎外感。

 しかし、「在日朝鮮人は介入するな」だって?  在日朝鮮人は日本によるアジア侵略史の当事者だ。さらに現在、同胞の子どもたちの多くは日本学校に通っている。「あの教科書」で学ぶことになるかもしれない、その意味でもまさに当事者だ。でも彼らの目に、その存在が映るはずもない。(韓東賢記者)

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