本社記者平壌レポート

にぎわう`愛国´閲覧室

在日同胞寄贈の専門書集める/科学技術発展に寄与


 【平壌発=金志永、李鉉民記者】「最近、とてもにぎわっています。国の科学技術を発展させるためにはまず資料。研究者たちが外国で出版される書籍をたくさん読んでこそ、世界のすう勢を知り、必要な知識を蓄積できるはず」

 平壌市の中心部にある朝鮮最大の図書館、人民大学習堂の3階にある「愛国図書閲覧室」のリ・ヨンスン書庫長(46)は言う。

 同閲覧室には外国の科学技術関連図書が数多く備えられており、その品揃えは朝鮮随一。すべて総聯をはじめとした海外同胞が寄贈したもので、「愛国図書閲覧室」という名の由来はここから来ている。

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 1982年、人民大学習堂のオープンに際し、在日本朝鮮人科学者協会が中心となって約10万部の書籍を寄贈した。その後、教員、医者、大学生、商工人ら総聯の各階層同胞が図書寄贈運動に参加した。運動は、80年代後半になると在米同胞の間にも広がっていった。

 現在まで寄贈されたのは数学、物理学、生物学をはじめとした基礎科学と電力、金属、機械、電子をはじめとした運営工学の各種専門図書と雑誌類、50余万部にのぼる。以前は、人民大学習堂が所蔵する他の書籍に混じって分野別に棚に収められていたが、88年に「愛国図書閲覧室」が新たに設けられ、海外同胞が寄贈した書籍が1ヵ所に集められた。

 リ書庫長は閲覧室を利用する研究者や学生、科学・技術者に本を貸し出す際、彼らの顔、名前とともに何を借りたかを覚えておくようにしている。

 「利用者の研究分野、研究課題が分かってくれば、関連資料について適切なアドバイスができます。閲覧室にはそれぞれ専門知識を持つ職員もいるので」

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 人民大学習堂のチョン・テオン室長(50)は、「(このような閲覧室は)世界的にも珍しいのではないでしょうか。祖国の科学技術発展のために図書寄贈運動を繰り広げた海外同胞の真心は、われわれの胸を熱くしました」と話す。閲覧室が設けられた時、化学・技術分野に携わる利用者たちは「必要な資料が豊富にあって、まるで私たちのオアシスだ」と喜び、本を寄贈した海外同胞にとても感謝していたという。

 チョン室長は72年に日本から帰国した。図書館の管理・運営状況を調査するために訪日したこともある。

 「祖国が苦難の行軍を歩んでいた時、在日同胞も長引く不況の中で経済的に苦しい生活を強いられていたはずなのに、図書寄贈は絶え間なく続けられました。私たちがそんな在日同胞からどれだけ大きな力と勇気を得たことか」

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 「苦難の行軍」の時期、人民大学習堂の利用者は減った。人々が科学の探求を後回しにしなくてはならないほど苦しい生活が続いていたからだ。しかし、利用者が減っても大学習堂は1日も休むことなくいつも門を開けていた。

 「試練の日々、総聯同胞が送ってくれたまさにその本が、科学技術発展への灯をともしてくれました。その灯は、試練を乗り越え経済強国建設を掲げた今、大きな炎となっています。祖国とともに歩む海外同胞がわれわれを見ている、世界がうらやむ繁栄を手にして彼らに新たな信念と誇りを抱かせたい――。愛国図書閲覧室の利用者からは、そんな熱い思いが伝わってきます」

 一時、閲覧室から遠ざかっていた科学者、技術者、学生たちが帰ってきた。リ書庫長は、懐かしいなじみの面々と再会することになった。

 「彼らの表情は以前と違います。その顔からは、科学技術を発展させて必ずや経済強国を建設するという覚悟がうかがえます。愛国という名を持つ閲覧室で、私は祖国の明るい未来を一足先に感じています」

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