女のシネマ
ガールファイト
闘う少女はしなやかに成長
鮮やかな右ストレートで、2度目の王座防衛を果たした洪昌守選手の活躍が記憶に新しいボクシング。そのボクシングを通して、青少年期の閉塞(へいそく)状況を打開、心身ともに人間的成長を遂げてゆく少女の物語。
ニューヨークは、ブルックリンの公立高校3年、17歳のダイアナはいつもいら立っていた。保守的な女性観をもつ父親の暴力がもとで母親は自殺、酒好き、バクチ好きの自堕落な生活を送る父親との葛藤は極限に達していた。 学校では要領のいい者が大手を振る。腕力のあるダイアナは、しょっちゅう暴力沙汰を起こして、今や退学寸前。ボクシングに出会うまではどこにも居場所を見つけられなかった。 追いつめられたダイアナの内なる怒り、青春のエネルギーが収れんされたのは、弟の通うボクシング・ジムだった。「王者はつくられるものである」「勝者は決してあきらめない」など、闘う者にとってリアルで説得力のあるスローガンがそこかしこに貼られたジム。黙々とスパーリングやシャドーボクシングに励む練習生に交じって、紅一点のダイアナ。ハードトレーニングを通してみるみる成長。持久力とともにしっかり自制心が培われ、一皮むけてゆく。 本場米国はもとより、今や日本でも女子のいないジムは珍しいと言われるほどブレイクしているボクシングは、並はずれた集中力と照準力を必要とされる完全な体力至上主義のスポーツ。長い間、 女人禁制 のとりでとなっていただけに、女のダイアナが本気でボクシングに取り組もうとすると、女性べっ視や 男の沽券 など旧態依然の男社会の通念とも闘わなければならない。 ラスト、アマチュアボクサーとして、順調にリーグ戦を勝ち進んできたダイアナの決勝相手となった恋人との対戦は圧巻。「人生そのものが闘い」―ダイアナのパンチがさく裂する。 カリン・クサマ監督。1時間50分。米国映画・松竹系にてロードショー。(鈴) |