「同化政策」の総仕上げ、「日本国籍取得緩和法案」


 日本の与党3党が成立をめざしている、日本国籍取得を届け出制に緩和する法案。この法案は特別永住者、つまりその大多数を占める在日同胞をターゲットにし、従来、許可制だった日本国籍取得を届け出制に緩和し、その取得を簡単にしようというものだ。聞こえはいいものの、本質は在日同胞の民族性を否定し、その存在を抹消しようというもので、同化政策の総仕上げとも言える。(生活・権利欄に関連記事)

絶対反対と怒る同胞たち

一貫した政策

 立命館大学に通う李圭浩くん(21)は、この法案が表面化した時、同胞にとって有利なのか不利なのかを判別出来ず、勉強を始めた。その過程で見えてきたのは、「在日同胞を消そうとしている」ことだった。

 日本政府は1910年から朝鮮を不法に植民地支配し、朝鮮人の民族性をはく奪、皇国臣民化した。解放後は在日朝鮮人を外国人として徹底的に差別し、無権利を強いた。

 李くんは、日本政府が 「国籍」を在日朝鮮人の民族性をはく奪し、日本人化する手段に利用してきた歴史を知る過程で、日本政府の一貫した政策と本音が見えてきたと指摘する。

 「法案を作った政治家たちは、『戦後補償の一環』などと聞こえがいいことを言っているが、だまされてはいけないと思った。歴史教科書からも日本の侵略の事実が消えている。特別永住者をターゲットに定めたのは、在日同胞が日本の侵略戦争の『生き証人』だからだ。その存在を消して、侵略の歴史の事実を闇に葬り去ろうとしているのだ」

 法案に潜んだ意図を知れば知るほど、周囲にも知らせねばと思い、留学同京都の仲間と勉強会を開いた。家族でも話し合い、民族の尊厳を消し去ろうとするこんな法案には反対し、例え成立することがあっても日本国籍を申請しないと約束し合った。

歯止めならず

  大阪・難波で司法書士業を営む尹炳泰さん(32)は、仕事がら、同胞から「帰化」の相談を受けることがある。

 「帰化」を希望する同胞の多くは、民族国籍であることが仕事や生活において不利だと語り、日本国籍を取得することによって、その差別から脱皮したいという。日本の教育を受けた同胞が多い。

 尹さんは、彼らの話を聞くたびに、国籍を変えても在日同胞に対する差別が解消されないと強調する。

 また、相続登記などの書類作成を依頼されることもあるが、その多くは、朝鮮人であることを隠して欲しいと念を押す。「朝鮮名=不利益」の現実の反映だ。尹さん自身も最近、入居差別を受けた。

 「民族教育、国民年金など在日朝鮮人に対する制度的な差別が『帰化』を促進している。在日朝鮮人として生きられる環境を整備するのが筋であるにも関わらず、今回の法案は差別にふたをし、 日本人化 を強いるものだ」。所属する在日本朝鮮人人権協会近畿地方本部で勉強会を続けている。

変わらぬ困難

 高成峰さん(27)は3、4世、とくに日本学校に通う同胞学生に朝鮮語を教えたり、同胞同士の出会いを作り、民族の誇りを育む活動をしている朝青専従活動家だ。東京・北支部で委員長を務める。

 法案が成立しても日本国籍を申請することは「絶対にない」。しかし、地域に住む同胞青年たちはどうするだろう、と不安になる。日本国籍を取得して「朝鮮系、韓国系日本人」として生きることもよしとする風潮があるからだ。

 また、多くの同胞青年が日本学校に通い、その大多数が自分の出自に誇りを持てないでいる。その原因の根本は、日本政府が民族教育を制度的に保障していないからだ。民族性を育む営みは同胞自らの努力でまかなわれている。その現場から法案を見る目は厳しい。

 「日本の過去の清算、朝・日の国交樹立、祖国の分断など、解放して半世紀以上たったが、在日同胞が幸せに生きるための条件は何ら整っていない。朝鮮人として生きることが困難な社会で、朝鮮系日本人は非現実的だ。日本政府は本来すべきことを放棄、国籍を付与することで問題を片付けようとしている。同胞をなめた、ばかにした法案だ」
(張慧純記者)

いつまでも朝鮮人として

WBC世界スーパーフライ級チャンピオン洪昌守さん

 今回の「国籍取得緩和法案」は、在日同胞を一日も早く「帰化」させようという日本政府の同化政策の一環だと思います。こんな日本社会で、薄れつつある民族性を守っていくためには、僕たち新世代がしっかりしなくてはいけない。

 僕は世界チャンピオンだけど、その前に、在日朝鮮人の洪昌守です。それを隠すつもりも、変えるつもりもない。いつまでも、朝鮮人洪昌守としてリングの上でたたかっていきます。

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