春・夏・秋・冬

 ハンセン病訴訟の報道を連日テレビで見ていて胸が詰まった。首相への面会を求めて官邸前で座り込みを続ける原告団。90年以上に及ぶ「らい予防法」(1996年4月廃止)による強制隔離政策で、彼らは人権を踏みにじられた半生を余儀なくされた

▼元患者たちは全国13ヵ所の国立療養所で人生の大半を過ごしてきた。根強い差別と偏見から、出身地や果ては本名すら明かせなかった。親や家族から見捨てられた人も少なくない。断種や中絶も強要された。だからこそ、隔離政策の違憲、違法性を認めた熊本地裁の判決は、彼らが初めて人間性を回復した瞬間であった

▼元患者たちが隔離されてきたので、この問題を今回はじめて知ったという読者も多いと思う。だが、私たちにとっては非常に身近な問題で、患者の中に数多くの在日同胞が存在した。しかも、彼らは療養所内においても、朝鮮人だからといって同室を嫌がられたり、何か問題が起きるとその責任を負わされたり、いわれなき差別を受けてきた

▼療養所の中では日本人と同様、偽名を使っていたという。本名、植民地時代に創氏改名によって強要された日本名、所内での偽名――差別にほんろうされ続けてきた無念や、いかほどであったろうか

▼闇に埋もれている事実は少なくない。関東大震災時の朝鮮人虐殺に関してもいまだに真相究明がなされず、日本政府の謝罪すらない。今回、小泉首相は控訴断念を決めたが、植民地支配という過去にどう向き合うのか、その時こそ真価が問われる。(聖)

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