こちら同胞生活相談綜合センター 北海道・札幌
自力で9割の案件解決
以前の2倍、内容も多様化/待つのではなく訪ねる
スタッフ全員で毎日学習「2500万円分を還元」
道内唯一の窓口 以前の北海道同胞生活相談所から道内唯一のセンターとして昨年3月、リニューアルオープンした札幌同胞生活相談綜合センター。同センターの特徴は、「同胞有資格者が少ないという地域の現状をふまえ、多岐にわたるほとんどの相談案件をセンター員たちが自力で解決してきたこと」(朴鐘民所長、48)だという。 そのために同センターでは、4人の専任スタッフ全員が朝の会議で毎日、在日本朝鮮人人権協会発行の「同胞の生活と権利Q&A」を学習し、一つでも多くの専門知識を身につけようと努力してきた。 また、専門家のアドバイスを受ける一方で、専門書やインターネットの法律相談サイトをフル活用し、案件の解決に努めてきた。 その結果、開設から約1年間に寄せられた196件の相談中、9割にあたる178件を自力で解決することができた。センターの手に負えず弁護士などに委託し解決したのは、それ以外の2件だけだった。金額に換算すると、「2500万円相当を同胞に還元できた」(朴所長)。 チラシ配りHP開設 センターのリニューアルオープンにあたり、スタッフは以前の相談所時代の教訓をふまえ、今後のセンターのあり方について幾度も討議を重ねた。 全国で運営されるセンターの多くは商工会に隣接している。商工会を訪れる同胞がついでにセンターに寄って相談を持ち込むというケースが傾向として見られるというが、同センターは札幌地域商工会とは離れているので、利便性という点においては決してプラスではなかった。 そのため、センター開設と同時に一人でも多くの同胞にセンターの存在を知ってもらおうと、チラシを同胞宅に配布し、ホームページを開いた。 また同胞たちに呼びかけて、薄暗かったセンターのある総聯北海道本部会館の入り口と事務所を明るい雰囲気に改装した。イメージチェンジである。 開設の集いには、司法書士の白吉雲さんに講演を依頼し、集まった80余人の同胞が一つでも多くの権利問題意識を持つよう企画した。 こうした取り組みの結果、以前の相談所時代に比べて相談件数は倍以上に増え、冠婚葬祭や税金問題などに限られていた相談内容も生活全般へと広がった。 例えば、身体に障害を持つ同胞高齢者の相談。障害者および高齢者年金は、該当する同胞たちには支給されていない。この同胞は生活保護だけで生活していたが、足が悪く、週2回の通院に必要なタクシー代がまかなえなかった。 センターではスタッフがケースワーカー(社会福祉相談員)や区役所の福祉課と交渉。生活保護の内容を拡大することで増額が可能になった。 結婚、高齢者、就職も 同センターが掲げる今年の目標は第1に、地域的な課題である「民族結婚の推進」だ。大きなイベントとしては、北海道同胞結婚相談所、朝青北海道本部とタイアップし、道内の男性と道外の女性を対象にした「出逢いのパーティー」を7月初に開催する予定だ。 第2は「同胞高齢者の特別給付金の拡大」。税金を納めているにもかかわらず、年金がもらえない同胞高齢者に北海道からは、特別給付金として月額1万円が支給されているが、今後この枠を市町村に拡大し、全道的に支給されるよう働きかけていく方針だ。 第3に、これも地域的な問題である「就職問題の解決」。 北海道では同胞が職を求めて他地方に流出するケースが少なくない。地域同胞社会の発展のために同胞の流出を防ぎ「地元での解決」を目指し、まずは同胞企業の求人状況などの実態調査から始めていく予定だ。 「相談を待つのではなく、自ら同胞を訪ねて相談に乗り、同胞の力になれるセンターを目指していきたい」とスタッフ一同、意気盛んだった。 |