本社記者平壌レポート

ITで経済強国へ

全部門で情報化を進める/通信ネットワークも整備


 【平壌発=金志永、李鉉民記者】経済強国を目指す朝鮮では現在、国家的な政策として経済のあらゆる部門での情報化を推進している。社会的な関心も高い。5月初め、平壌では金永南・最高人民会議常任委員会委員長をはじめ党と政府、各分野の活動家らによる「情報産業時代に関する主体的思想理論に関する中央研究討論会」が開かれ、情報化への幅広い方途が論議された。労働新聞をはじめ各マスコミでも、先月から情報産業時代に関する内容が目白押しだ。朝鮮では過去にも自動化、コンピューター化が掲げられてきたが、現在強調されている情報化はこれまでとは次元が違う。

「金の卵」を選抜

 朝鮮コンピューターセンターのチェ・ウンチョル技師長は「経済のすべての分野を情報化するうえで、情報インフラをより高い水準で完成させることが重要な問題となる。全国的なネットワークを発展させ、より多くの人がここに加わるようにしていかなくてはならない」と話す。

 電子工業省傘下の電子製品開発会社は最近、平壌にコンピューター組立生産基地を設けた。ペンティアムV、セレロンクラスのCPU(中央演算装置=パソコンの心臓部、頭脳に当たる)を搭載した最新機種のコンピューターを生産できる基地ができたことにより、一連の情報インフラ整備をより高いレベルで行っていけることになった。米国などによる経済封鎖が続く中、情報技術(IT)設備を自力で生産できる基地を設けた意義は大きい。

 逓信省では、全国的なネットワークを完成させるための事業に本格的に着手。中央から各道にいたるまで電送ケーブルを拡張し、現代的なデジタル通信設備で装備する計画を推進中だ。すでに内閣の各委員会・省、各関連機関、数多くの工場、企業所などを結ぶ全国的なコンピューターネットワークが形成されており、とくに工業生産の分野で情報の共有、交換が活発化している。

 今年度から万景台学生少年宮殿、平壌学生少年宮殿、金星第1、第2高等中学校でコンピューター・エリートを育てる英才教育が始まったが、これらの施設に設置された数百台のコンピューターは、新設されたコンピューター組立生産基地で製造したものだ。これらのコンピューターは、生徒たちが朝鮮コンピューターセンターなど各関連機関の資料を自由に利用できるようネットワークで結ばれている。

 ここで学ぶ子どもたちのほとんどは労働者、農民家庭の出身者。全国から実力本位で選抜された「金の卵」たちだ。

カギは「ウリ式」

 朝鮮では、情報産業の発展を急いでこそ、電力、石炭、金属工業と鉄道運輸など経済の主要部門も発展させていけるという視点で政策を立案、推進している。

   今年の重要課題である既存の経済土台の技術革新も、ITの導入に的が絞られている。単純に機械化のレベルを向上させるという次元ではなく、ITを導入して高度な自動化、知能化をはかり、すべての生産経営活動をコンピューター化したモデル工場が続々と建てられている。

 金策工業総合大学情報センターのホン・ソヒョン所長は、これからの情報産業の時代、コンピューター産業と情報通信産業、情報処理産業とプログラム産業のような知識集約型の産業の拡大に従い、朝鮮でも従来の産業構造が新時代のニーズに相応しく改善されていくだろうと予測する。

 朝鮮はIT分野では後発国だが、世界の水準に追いつき、追い越すための構想を持っている。そのカギは、「ウリシク(われわれ式)」。チェ・ウンチョル技師長は次のように語る。

 「コンピューターネットワークで世界が一つに結ばれた今、ITには互換性が欠かせない。しかしそれは、進んだ国の技術を模倣すべきだという意味ではない。情報化時代の特徴は、何でも着想し、発見さえすればそれを現実に転換できる限りない可能性が開かれたというところにある。わが国のプログラム産業も、今は世界的に最も普及しているOSであるウィンドウズ上で使えるプログラムを開発しているが、将来的には、ハードもOSもすべてわれわれの手で開発する方向で進むべきだろう。わが国には、情報産業の先進国に加わり世界を驚かせることのできる十分な力がある」

 朝鮮のIT専門家たちは、経済強国建設の構想は機械産業から情報産業への移行という「歴史の転換」を念頭に置いていると話す。それは何より金正日総書記自らの構想だ。

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