みんなの健康Q&A 

婦人科の病気(中) 避妊

ピル、IUDうまく利用を
手術100%でないが後遺症なし


  私にはすでに2人の子供がいます。子供は2人で十分だと思っているのですが、夫はなかなか避妊に協力してくれません。

  夫の協力が得られないというのは、恐らくコンドームの使用の事ではないでしょうか。この事に触れる以前にまず、理想的な避妊法とは何かを考えてみましょう。@効果が確実A簡単B費用が安いC副作用がないDセックスのムードに悪影響を与えないE女性の意思だけで実行できる――これらの条件を備えているのが理想的だとすると、現在の状況はどうなのかを日本と世界とで比較してみたのが表1です。世界の中で、日本ほどコンドームを避妊法として重視する国はありません。

 一方、表2では各種避妊法の妊娠率、すなわち失敗率が示されています。殺精子剤(日本ではほとんど使われていません)を除くとコンドームの失敗率が高いのが目立ちます。女性の意思を尊重する、失敗したくないという点から考えると、コンドームに頼らず他の避妊法に切り替える事をお勧めします。

表1   日本と世界の避妊法

  @日本の10代妊娠例(単一選択) A日本既婚女性(2つ以内) B国連調査(単一選択)
コンドーム
オギノ式定期禁欲法
性交中絶法
基礎体温法
女性不妊手術
IUD
男性不妊手術
殺精子剤
ピル(経口避妊薬)
洗浄法
ペッサリー
その他
無回答

75.6
0.6
20.1




1.8
0.6


1.3

77.2
8.1
9.6
8.9
5.3
3.8
1.2
0.5
1.3
0.5


2.6

10.0
7.0
8.0

26.0
19.0
10.0

15.0


5.0

   @北村邦夫   厚生省心身障害者研究   「10代の望まない妊娠防止対策に関する研究」報告、1996
   A第23回全国家族計画世論調査(毎日新聞社)、1996
   B国連報告、1988

表2   各種避妊法の効果

方法 避妊率(100避妊/年)
経口避妊薬 0.5
IUD 1.5
コンドーム 12.0
リズム法 6.0
殺精子剤 21.0
卵管結紮 0.4
精管結紮 0.1

Hatcher   RA(1994)

  私は今妊娠9ヵ月、3人目の子供です。出産後に避妊手術を受けようかと夫と話し合っています。でも周りから「更年期が早く来る」など、いろいろ不安な話を耳にします。

  産後の避妊法は卵管結禁術と言われるもので(非妊時でも行えますが産後に行うのがベスト)、永久不妊法とも呼ばれています。しかし、表2でもわかるように100%ではありません。お腹を切ってまでしても100%でないならと、他の避妊法を選び、産後の結禁手術を中止する方も少なくありません。ただし、周りの方々が言うような後遺症などはまったくありませんので、その点に関しては安心してください。

  私は今年結婚予定です。結婚後もしばらく仕事を続けたいので、子供は数年先にと思っています。その後の妊娠に影響のない安全な避妊法を教えてください。

  費用もかからず、副作用、後遺症も何もないという点では、基礎体温法でしょう。基礎体温を毎日測定して、体温が低温から高温に移行(すなわち排卵)後3日すれば、その後は避妊しなくても妊娠しません。でも、この方法は忙しい、働く現代女性にとっては実行可能とは思われませんので、やはりピルかIUD(子宮内避妊具)がベストだと考えます。

 日本で低用量ピルが使用可能になってから、今年の秋で2年になります。以前使われていた中用量ピルより副作用も激減し、使用される方も増加しています。必要な期間だけこれを服用し、妊娠を希望する場合はピル中断後1〜2回自然排卵を待ってから妊娠すると、何の影響も与えないので安心です。

 ただし、まれな場合ですが、ピル使用に適さない方もいらっしゃいます。それを表3にリストアップしました。参考にしてください。

 また、IUDに関しても、銅付加IUDが使用可能になりました。銅付加IUDは、本体の大きさは従来のものと比べて明らかに小さいにもかかわらず、避妊効果は10倍以上、中止率は低く、継続率は高いという理想的なものです。どれほど優れているかは表4でも明らかです。

 理想の避妊法にはまだ一歩及びませんが、それでも以前に比べるとはるかに成績が向上してきています。ピルやIUDを上手に利用して、あなたの性生活をより豊かなものにしてください。(医療法人友愛会ミナミ産婦人科院長)

表3   ピルの禁忌

1.絶対的禁忌
1)静脈血栓症、肺塞栓およびその既往
2)脳血管、心血管系異常およびその既往
3)エストロゲン依存性腫瘍およびその疑い
4)妊娠中
5)診断の確定していない異常性器出血
6)重症肝機能障害
7)大手術予定者(術前4週間、術後2週間)
2.相対的禁忌
1)高血圧、糖尿病、喘息、肝・腎疾患
2)45歳以上の女性
3)35歳以上の喫煙女性
4)授乳婦
5)思春期以前の若年女性
6)てんかん、偏頭痛、抑うつ症

表4   銅付加IUDと他のIUDとの比較

項目 銅付加 非銅付加
妊娠
脱出
除去
   1)出血・陣痛
   2)他の医学的理由
   3)妊娠希望
   4)他の個人的理由

中止率(%)
継続率(%) 
0.3
1.4

1.5
0.7
1.1
0.0

4.9
95.1
3.7
1.7

2.7
0.7
1.3
0.3

10.4
89.6

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