女のシネマ
青〜Chong
「違うけど同じ」在日の青春
恋とケンカと友情は、青春ドラマの必須アイテム。このアイテムを駆使して、朝鮮高級学校に通う在日3世の青春をけれん味なく等身大に描いた青春映画。
高3のテソンは野球部のエース。同じ野球部のヒョンギとは親友。2人は町の不良に売られたケンカを買ったり、学校で悪ぶったり背伸びしたりの生活を送っている普通の高校生。それでも、民族の誇りと結束を教えられて小学校からずっと民族教育を受けてきたテソンが最近とまどっている。姉の結婚相手が日本人だということと、美しい幼なじみのナミが日本人とつき合っているという噂に。 折しもテソンの高校が、高野連(日本高校野球連盟)への加盟を承認、朝高として初めて公式試合出場の運びとなった。喜びに沸き立つ周囲をよそに、とまどい揺れる心でマウンドに立つテソン。結果は0―27のコールド負け。深い挫折感を抱いてテソンは野球部を去る。 在日三世である監督自身の体験が基になっている。10年前の神奈川朝高の高野連加盟や在日同胞家庭の日常の生活風景、1世や2世とはまた違う3世の姿や本音が誇張なく表れている。映画では日本語がほとんどだったが、朝高に通う在日3世は本来、朝鮮語と日本語の2重言語生活者。そして、相対する朝・日、2つの生活文化を共有、体現者でもある。 ここに「同じだけど違う、違うけど同じ」在日の青春のキーワードがある。 自己のアイデンティティーを求めて青春を生きるテソンはまた、日本社会における特殊なマイノリティーの青春をも生きるのである。 とまどい悩みながら、同化や拒絶ではなく、「オレはオレ」とありのままの自己肯定から始めるテソンが、再びマウンドに立つ。健やかな直球が一陣の風を放つ。 李相日監督。日本映画学校卒業制作。第22回ぴあフィルムフェスティバル/PFFアワード2000 グランプリほか4賞受賞。54分。(鈴) |