戦後補償要求市民団体訪朝団 報告集会

率直な意見交換

成果を今後の運動に

報告集会では朝鮮の戦争被害者の証言ビデオも上映された(19日東京)


 日本政府の戦後補償を促すため、3月に訪朝した日本の市民団体の代表らが4月19日、都内で報告集会を開いた。訪朝団は土屋公献・日本弁護士連合会元会長を団長とした12人で、植民地時代、日本軍に徴兵された被害者3人、強制労働を強いられた徴用被害者2人、被爆者2人、元「従軍慰安婦」2人の聞き取り調査を行った。また朝・日政府間交渉朝鮮側代表の鄭泰和・外務省巡回大使をはじめ関係者や研究者と意見交換をした。報告集会で代表らは実り多い訪朝だったと強調し、成果を今後の運動に生かしていく展望を語った。土屋団長、有光健・戦後補償ネットワーク世話人、金英姫・「戦後補償の実現を! 日韓市民連帯共同委員会」共同代表の発言を紹介する。

責任果たし国交正常化へ/土屋公献・元日弁連会員

 被害者の方々はみな、日本はいつになったら謝罪と補償をするのか、それまでは死ねないと言った。今後も戦後補償を日本政府に迫っていくことで責任を果たしたいと改めて決意した。

 訪朝したのは初めてだが、まさに百聞は一見にしかずだった。日本政府は、朝鮮に対する悪いイメージを植え付けている敵視政策を改めなくてはならない。国交正常化交渉でも、つまらない問題をねつ造したり、針小棒大に取り扱って交渉のカードにし、進展を妨げているのは日本政府だ。

 鄭泰和大使とも1時間半、たっぷり話をしたが、うなずかされることばかりだった。国交正常化を妨げているのは日本政府の敵視政策であり、加害者である日本が被害者である朝鮮に対してきちんと過去を清算するのが国交正常化交渉の過程であるべきだ。

 植民地支配による苦しみ、屈辱、痛みに対し、経済協力でどうにかお茶を濁そうなんていけない。過去の清算は忘れることではなく、きちんと思い出し、責任を果たすことだ。その責任を果たさないと、日本はアジアの一員として仲間に入れてもらえないし、国際的に軽蔑される。

 在日朝鮮人に対しても、日本社会は偏見を持ち、冷たい態度を取り続けている。反省して、心から仲良くしなくてはいけない。

被害者招き証言集会/有光健・戦後補償ネットワーク世話人

 謝罪と補償について、率直な意見交換ができた。国家間の賠償と個人の請求権の問題など、考えに違いはあるが、海外の他の戦後補償要求の情報提供なども含めて意見交換し、理解を深められ有意義だった。

 補償問題について朝鮮側は、@1905年(第2次日韓協約)に始まる40年間の不当な占領と植民地支配A戦時下でさらに強化された暴力的支配と収奪(強制連行・徴用、「慰安婦」など)B戦後の敵視政策と戦後処理の放置――に対する謝罪と補償が必要との立場。1905年から21世紀初頭まで約1世紀に及ぶ日本の加害への認識を強く要求している。

 @とBを、今後どう決着させていくかが課題となる。日本の市民運動はAしかやってきておらず、@Bの解決モデルはない。とくに@は、イギリスとインド、フランスとアルジェリア、インドネシアなどの間でも20世紀中に解決できなかった問題で、今後、世界的な課題となるだろう。

 被害の全体像などについて、基礎となる資料がほとんどなく、困難が伴う点も指摘された。その後の朝鮮戦争もあり、略奪された文化財のリスト作成なども朝鮮側だけでは困難な面がある。資料収集も南北朝鮮と日本の国際的な共同作業として行う必要がある。南の被害者、市民団体と交流を進めたいという大変積極的な意気込みもひしひしと感じた。

 今後、継続的な交流を行っていきたい。8月に被害者代表を日本に招き、広島、名古屋、大阪、東京で証言集会を開く予定だ。

過去清算へ南北共闘を/金英姫・「戦後補償の実現を! 日韓市民連帯共同委員会」共同代表

 90年頃から「慰安婦」問題に取り組んできたが、当時からこの問題では南北が壁を越え、手を携えていけると信じていた。

 92年の公聴会に北から訪日した元「慰安婦」の金英実ハルモニに会いたかったが、亡くなっていた。南北和解、そして戦後補償への動きが進む中で、被害者はどんどん高齢化し、亡くなっている。残念でならない。

 今回、平壌で元「慰安婦」のハルモニ二人から話を聞いたが、2人とも杖なしでは歩けない状態だ。その1人、李桂月さんに「また会いましょう」と言ったら、「統一したら」と答えた。もう余生が長くないことを知りながら確信に満ちてそう答えるハルモニの、気持ちの強さを感じた。

 北の被害者、関係者は一様に「(過去の清算を)日本はやる気があるのか」と言った。必ず清算させるのだという強い意思を感じた。統一への思いも強かった。こうした人たちとなら、過去の清算を求める運動も統一への運動も、一緒にやっていけると確信した。

 今回の訪問にあたって、南側の様々な関係者から統一と戦後補償の実現に向けた、温かいエールをいただいた。在日韓国人である私は、南北、そして日本を結ぶ役割ができる。南北が手をつないで日本に戦後補償を求めていく、その中で統一への歩みを進めていく――そのためのネットワーク作りを急ぎたい。

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