ざいにち発コリアン社会

客とのつながり大切に

イタリア料理店など4店舗を経営する 池光慶さん (千葉)


駅前の飲食店激戦区に位置する「GanZo」

イタリア製のかまで焼く評判のピザ

 同胞飲食店といえば、すぐに焼肉を思い浮かべる。しかしそれは昔の話。近年、そのジャンルは多様化している。千葉市在住の池光慶さん(57)は、京成千葉中央駅界隈にイタリアンビアホール、洋風居酒屋、和と洋の創作料理店、計4店舗を構えるオーナーだ。なかでも、イタリアンビアホール「GanZo(ガンツォ)」は、「千葉でこんな美味しいピザを食べさせてくれる店はここ以外にない」と評判。「GanZo」を訪ねた。

何を求めているのか、常に気配り

民族教育への思いも同じ/サッカー活性化に力注ぐ

おしゃれな店

 京成千葉中央駅前という好立地、繁華街の一角にある「GanZo」。「焼肉以外のちょっと目先の変わったものを」という池さんの冒険心から3年前にオープンした。

 フロアは1、2階合わせて142席。インテリアは木目調で統一されている。「自然のぬくもりを感じてほしい」という池さんのこだわりからだ。

 客層は幅広いが、なかでも女性客の姿が目立つ。週末などは開店前から並んで待つ人の列がとぎれない。冬場は「寒いなか申し訳ない」(池さん)と、ひとりひとりにホットワインをサービスする気の配りようだ。

 客が店内に入るときはスタッフがエスコート。客を煩わせないよう、「ドアに触らせない」ためだ。

 2階には16人がけのテラスがあり、年2回、ジャズやレゲエなどのライブが行われる。フロアは貸切可能。立食だと120人収容できるので、結婚パーティーなども開かれる。

 メインはやはりピザ。専門職人が本場イタリアのものとまったく同じくあつらえたかまで、天然クヌギの薪を燃やし、四百度の熱で焼き上げる。

 生地はクリスピータイプ。薄いが弾力性があり、周りの膨れあがった部分はパリッとした歯ざわり。トッピングは秋はきのこ、冬はたらばガニなど季節に合わせて変わるので、いつ来ても旬のものを味わえる。

「金儲けじゃない」

 池さんは16年前、6年間、同じ地域でショットバーを営んでいた。カウンターをはさんだだけの構えで、常連客なら、その日の表情や雰囲気から何を欲しいのかを読み取り、それに合わせてカクテルを作る。

 この時代に、「客は金もうけだけの対象じゃない。人間対人間としてのつながりを深めることが大切だ」と強く思ったという。

 だから池さんは、毎日のように各店舗をそれとなく見て回り、「客が何を望んでいるのか、その様子に早く気づくよう」、接客法の基本をスタッフに徹底して教え込む。

 それがあまりに細かく手厳しいので、池さんが顔をのぞかせるとスタッフらは「嵐がきた」とささやき合うほどだとか。

 「わざわざ足を運んでくれた客にどう還元するかを常に考えている」と言う池さん。おしゃれで美味しく、客にとことん優しい店――。池さんの心意気が客の心をしっかりつかんでいる。

同胞にあたたかく

 「客にとことん優しい店」を追求する池さんだが、同胞に対するあたたかさも人1倍。その思いは民族教育への関心の高さに表れている。子どもは男ばかり3人だが、もちろんすべて地元の朝鮮学校に通わせた。

 池さんがいま、とくに力を注いでいるのは、各初中級朝鮮学校サッカー部の活性化だ。自身も大のサッカー好きで、「在日のいい選手を育てたい」と、関東以外の学校でも、遠征試合を行うところがあれば同行し、監督さながらの技術指導を行うとか。

 もちろん、地元の朝鮮学校を含め、遠征などで千葉に訪れた他地域の朝鮮学校サッカー部員らを店に招待することもある。「たくさん食べて体力つけろ」と、生徒たちのアボジになった心境で振舞うのだという。

 「同胞を愛する経営者、同胞から愛される店でなくちゃ」と池さんは笑った。
(李賢順記者)

 GanZo=TEL 043・202・2885

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