在日コリアンによるラジオ番組
「ウリンアリランが」スタート――広島Pステーション
祖国統一、近づけたい
20、30代のテンポよいトーク
「等身大で生き生きと」
時事ニュース、歌、歴史コーナー 朝鮮半島の情報満載
収録現場。20、30代のコリアンが元気一杯のトークを披露する |
「身近な朝鮮の話題を提供し、日本人の意識を変えていきたい」と話すPステーションの浅井昭秋局長 |
在日コリアンによるラジオ番組「ウリンアリラン」が14日、コミュニティーFM放送・広島Pステーションで始まった。毎週土曜夜7時からの1時間番組。時事ニュース、流行の歌や観光スポット紹介、歴史コーナーなど朝鮮半島の情報が満載だ。番組を担当するのは広島市内に住む20、30代のコリアン。育ってきた環境や所属する団体は違えど、同胞社会に新しい風を吹かせ、統一を近づけたい、との思いはひとつ。1回目の収録現場を訪れた。 立場、所属超え 「アンニョンハセヨ。リ・ファジイムニダ。パンガプスムニダ」。番組のパーソナリティー、李和枝さん(27)の元気一杯の声が記念すべき第一声を放った。朝大卒業後、アナウンスの専門学校に通いPステーションのスタッフとなった。ほかにもアシスタントに朝青広島・安芸支部の呉明淑さん(26)、民団青年会の金竜司さん(27)、レギュラーゲストに広島朝鮮初中高級学校の呂東珍先生(36)、日本人は唯一、Pステーションスタッフの真志田和江さん(23)だ。 緊張で顔がこわばっているのは、ラジオ初挑戦のアシスタントたち。在日コリアンが制作する番組は神戸にもあるが、広島では初めて。「統一」のメッセージを自分の「口」で伝える責任も肩にのしかかる。 「どんどんしゃべっていきましょう!」。李さんと真志田さんがけん引役となり皆のトークを引き出す。 初回ということで、まずは自己紹介から。 生まれ育った地域の話をしていると、偶然にも呉さんと金さんが朝鮮人部落がある西区福島町出身ということが判明。「うっそー。じゃあ、○○○保育園通ってた?」と地元の話で意気投合、一気に話の火がついた。初対面の2人の距離がぐんと縮まる。大声で盛り上がる2人にスタジオの張り詰めた空気が一気になごむ。会話もなめらかになってきた。 一方、呂先生は安芸の朝鮮人部落育ち。軍都と呼ばれた広島には植民地時代、多くの朝鮮人が強制連行された。大規模な土木工事には必ず朝鮮人の姿があった。朝鮮人部落はその歴史を証明するもの。「貧しかったけど、幼な心に居心地が良かった記憶がありますね」と自らのルーツをふり返った。 「南の歌手のキム・ヨンジャさんが平壌でソロ公演」、「イタリアのスポーツメーカー、フィラが朝鮮のスポーツ選手にユニホーム提供」。時事ニュースコーナーは統一、和解へと進む朝鮮半島の明るい話題で持ちきり。 呂先生は、朝鮮半島に伝えられる伝統、風習、文化や日本文化との共通性を解説する「ウェルカムティーチャーコーナー」を担当、番組の引き締め役ともなっている。 「ウリンアリラン」という番組名には、一、二世にとって悲しみの象徴だった歌、アリランを、若い世代が喜びの歌にし、統一を近づけていこう、との思いが込められている。 昨年6月の北南首脳会談に衝撃、感動を受け、この番組の編成に取り組んだという浅井昭秋放送局長(61)。「統一の展望が見えた今、課題はその実現。黙って座ってられないと思った」と語る。 「在日朝鮮人社会の生活や習慣、ものの考えかたを等身大で伝え、日本人が朝鮮のことでびっくりしたり、笑ったり、悲しむ感性を育てたい。それが隣国への関心につながる。平和都市広島から統一のメッセージを届けたい」(浅井局長) Pステーションは周波数76.6メガ・ヘルツ。広島市中区を中心にその近郊で聞ける。 「同世代がどんどん参加できる番組に」(李さん)、「コリアンをさけている人、受け止めることが出来ない同胞に明るい話題を届けたい」(呂先生)。若手のテンポあるトークが毎週土曜日の夜、広島の街を駆け巡っている。(張慧純記者) |