取材ノート

首かしげる「国籍は記号」


 日本の芸能、スポーツ界で活躍している人たちの中に、在日同胞が多いことは周知の事実だ。あまりの多さに、「マイケル・ジャクソンも同胞だ(!?)」という冗談が飛び交ったくらいだ。

 マイケルとまでは言わないが、実際「女王」と呼ばれた歌手から始まって、その昔は、「新御三家」や「三人娘」、現在も歌や芝居で活躍するトップアイドルグループの中にもいる。人気俳優や女優の名前を挙げればきりがない。スポーツ界はさらにすごい。プロ野球界は簡単に1つのチームができるくらい多いという。

 ここに1つのエピソードがある。

 美空ひばりが亡くなる前にレコーディングを予定していた幻の歌があるという。何人かの日本人歌手がチャレンジしたが、誰一人歌いこなせなかった。そこで白羽の矢がたったのが、南の歌手金蓮子だった。一昨年のNHK紅白歌合戦に出場し、美空ひばりの歌を歌って絶賛を浴びた。その金蓮子が、4月、平壌を訪れた。統一を口にし南北それぞれの歌を歌い、平壌市民から拍手喝采を受けた。

 時代が確実に変わっていることを実感する。

 だが、日本の社会では今も昔も変わらず自分が在日同胞だと明かして生きて行くには、様々な障害がある。芸能界やスポーツ界であればなおさらのことだ。

こうした現状はいうまでもなく、個人のアイデンティティーの問題ではなく、日本社会のあり方に原因がある。

 特別永住者の数は現在、52万人にのぼるが、日本にこれだけの在日同胞が存在することすら知らない日本人もいる。

 このような日本社会の現状にありながら、国籍をもはや記号だ、と時代を評することに首をかしげざるを得ない。自分の出自を堂々と明かし、差別を受けることなく生きていける時代を作り出すことが何より優先されるべきだろう。(金美嶺記者)

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