「4月の春親善芸術祭」に参加
南の歌手キム・ヨンジャさんに聞く
歌で統一の虹かけたい
鮮やかなチマ・チョゴリに身を包み熱唱するキムさん |
【平壌発=金志永、李鉉民記者】4月15日の太陽節に際して開かれる「4月の春親善芸術祭」に参加するため、日本で活動する南の歌手、キム・ヨンジャさんが5日から12日まで平壌を訪れた。今年で19回目を数える同芸術祭だが、南の歌手が参加するのは初めて。7、9の両日、平壌市内でソロ公演を行い、北と南の歌を熱唱した。11日には、金正日総書記がキムさん一行と会見、公演も観覧した。平壌の印象をキムさんに聞いた。
―金正日総書記に会った印象は。 昨年、金大中大統領が平壌を訪れた際、テレビなどを通じて総書記の話を初めて聞きました。ユーモアに富み、話も上手。新鮮な印象を受けました。 ところが、実際に会ってみたら、それ以上でした。明るく気さくで本当に立派な方。嬉しさより緊張が先に立ってしまい、公演でも何の歌をどう歌ったのやら記憶がないほどです。 今回、世界のクラシック名曲集と私が出したレコードを総書記へのプレゼントとして持参しました。総書記は、芸術祭を自ら発案し、音楽にも造詣が深いそうですが、歌手として名誉なことです。なぜなら、音楽をよく知る人は、私の音楽を説明せずとも理解し、芸術の発展のためにいっそう力になってくれます。歌手として、これ以上、望むものはありません。 ―6.15共同宣言によって、閉ざされていた往来の道が切り開かれ、キムさんの訪北も実現しました。 総書記が名前を挙げた歌手に私が含まれていたなんて信じられないことで、本当にありがたい。夢ではないかと思ったほどです。 平壌で公演したいという考えは5年前からありましたが、海外で活動する私のことを総書記が覚えていて招待してくれたことで、その思いはいっそう強まりました。今はまだ、様々な条件が整って初めて南北往来が可能な現状ですが、今回、私が平壌に来ることができたのは、総書記が道を開いてくれたからだと思います。 ―平壌でのソロ公演は、観客と一体になった舞台だったように見えました。 舞台に上がるまでは緊張しました。これほど多くの北の歌を観客の前で歌うのは初めてでしたから。 「フィパラム」(口笛)のような歌を歌う北の歌手の皆さんは、音域がとても高く、声も柔らかく澄んでいる。そのような人たちの歌をどう歌えば良いか。音を低くし、自分なりに表現してみましたが、観客に喜んでもらえて幸いです。 また、新しい歌も何曲か覚えてきました。北の歌は歌詞もメロディも良く、すぐ覚えました。やっぱり1つの民族なんだと感じました。北には、国を愛するという内容の歌が多いですね。どこで暮らしていても国を愛する気持ちは一緒。だから、北の歌をすぐに理解できるし、舞台でも感情表現ができるのです。 ―ずいぶん前から、平壌での公演を希望されていたとの話ですが。 平壌で分断前の朝鮮の歌を歌ってみたいという計画を持っていました。北の皆さんと民族の共通性を確認したかったので。 今回、「タヒャンサリ」(異郷暮らし)という昔の歌を歌ったのですが、なぜか涙が流れました。日本で暮らす同胞の前で公演することがありますが、それこそ植民地支配の時代から、異郷で多くの苦労をされてきた方たちではないですか。その気持ちを歌ったのが、この曲なんです。 日本で歌手活動を始めて14年目になります。国を離れて活動していると、統一への思いはいっそう切実になります。その思いを込めて歌おうと思いました。平壌の舞台に立て、長年の希望がかないました。 ―芸術祭に南の歌手が参加するのは初めてです。 芸術祭のことはテレビで見て知っていました。初めて参加しましたが、平壌市民は熱烈に歓迎してくれました。自主・平和・親善の理念に沿って開かれる芸術祭の意味が良く分かりました。平壌公演は私の歌手人生において、とても重要な出来事になりました。 ソロ公演の後、私が乗った車の運転手の方が話してくれたのですが、ヨンジャさんが舞台で笑うと観客も笑い、ヨンジャさんが泣くと観客も泣くんですって。舞台と観客が1つになったと。その話を聞いて、平壌に来た喜びを感じました。平壌の方たちが私と呼吸を合わせてくれたなんて、本当にありがたいことです。 ―平壌公演をステップに、今後の活動をどう展開されていくのですか。 ポチョンボ電子楽団やワンジェサン軽音楽団の歌手との競演ができればいいですね。ただ、あの高い音域に私の声が合うかなあ。 1日も早く統一が実現してほしい。私の歌う歌が南、北、海外にかかる虹の橋、統一の土台になれば幸いです。今回の平壌訪問に先立ち、総聯と民団の同胞が激励の意味を込めて公演の場を設けてくれました。今後も歌を通じて民族の和合に寄与していきたいと思います。 総書記は、平壌に来たくなったらいつでも来るよう言ってくれました。20回目になる来年の芸術祭にも参加したいですね。 |