取材ノート

カボチャの種が実る時


 本紙「健康・趣味欄」で朝鮮カボチャの種のプレゼントを企画したところ、予想以上の反響があった。先着順としたためか速達で応募した人までいた。

 うれしかったのは、カボチャにまつわるエピソードや種の使い道を思い思いに書いてくれたことだ。

 課外授業に使いたいという朝鮮学校や幼稚園の先生。1世のハルモニが大勢学ぶ夜間中学で教える日本の先生からの、学校の畑にぜひ植えたいというはがきもあった。中でも多かったのが、1世である父母、祖父母、しゅうと、しゅうとめなどの思い出をつづったもの。

 「88歳になるハラボジ(祖父)が記事を見て『あー、なつかしいな』と言いながら、故郷にいる時に食べたカボチャの話をしてくれました。その時の味はそれはおいしかった」と書いたある同胞は、ハラボジにもう1度その味を味わってほしいと応募した。

 「千切りしたカボチャをししとう入りのヤンニョムで炒め、そうめんの上にかけ美味しく食べていた父を思い出します」と、亡き父との思い出を切々とつづった主婦。「わが家のレシピ」を伝授する人もいた。

 日本では朝鮮カボチャは、朝鮮市場などで売っている程度で、なかなか手に入らない。日本で生まれ育った3、4世の中には、実の形や食べ方を知らない者も少なくないと思う。

 「朝鮮料理と健康」というテーマに長い間取り組んでいる恵クリニックの韓啓司院長は、民族意識に最も影響するものとして、言葉とともに食文化をあげる。

 異国の地で自国の食文化を伝えていくことは、民族性を守るうえで少なからぬ役割を果たす。今回の企画がその一助になれたとしたら幸いだ。

 収穫できたら、ぜひまたエピソードなどを寄せてほしい。朝鮮カボチャの種が、読者と本紙を結びつける大きな実となってほしい。(文聖姫記者)

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