「国籍法改正案」Q&A

「帰化」を「国籍取得」へ

同化政策の意図変わらず

同胞社会を崩壊、権利闘争を後退


権利保障、差別解消ならず

 日本の与党3党が今年に入って、特別永住者を対象にした「国籍法改正案」(以下改正案)を国会に提出しようとする動きを見せている。改正案は、「帰化」を「国籍取得」という言葉に替え、巧妙に政策の意図を隠してはいるが、その内実は、巧妙さを増しながら、これまで一貫して日本政府が行ってきた在日同胞を永遠に抹殺しようとする同化政策の総仕上げだと批判されている。改正案についてQ&A方式でまとめてみた。
(金美嶺記者)

  どのような経緯で今回、改正案が浮上したのか。

  改正案は、地方選挙権法案が論議されたことによって、日本の法務当局によると、10年も早く日の目を見ることができたと発言している。

 地方選挙権の問題が論議されている時、ジャーナリストの桜井よし子氏など反対論者は、「選挙権がほしいなら国籍取得が筋」(朝日新聞2000年10月18日付)などと発言してきた。さらに、「帰化の制度があるにもかかわらず、母国の国籍に固執するというのは、日本国と運命をともにしない意思表示」(自民党横浜市議会議員の国会での参考人発言)とも言っている。行き着く結論は、在日外国人の権利問題は、日本国籍の取得によってすべて解決されるべきだ、といっているのだ。

 以上の発言からも明らかなように、地方選挙権法案の代替案として浮上してきたのだ。

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  今回の改正案は、なぜ特別永住者に限定しているのか。

  在日朝鮮人は「自然消滅する」運命にあると、かねてから持論を掲げ、論文を発表してきた現役法務官僚・坂中英徳氏(新潟入国管理局長)の最近の発言の中に、「国籍法改正案の成立によって、特別永住者の帰化手続きの簡素化が実現すれば、在日韓国・朝鮮人の多くが日本国籍を取得すると予想され、韓国籍・朝鮮籍の在日韓国・朝鮮人の数が大幅に減少すると見込まれます。その場合、在日韓国・朝鮮人社会は50年を待つことなく早期に『自然消滅の日』を迎えることになります」とある。

 この発言からも明らかなように、狙いは長年、日本当局がもくろんできた在日同胞の歴史的な抹殺であり、現在ある同胞社会、同胞コミュニティーを消滅させようというものだ。

 さらに坂中氏は、今後、日本が少子高齢化などにより、多くの外国人を受け入れなければならないなら、一番安全な方法として「すでに同化している特別永住者」を日本人として取り込み、他の外国人は、無権利のまま放置するという外国籍住民を分断化する発言もしている。

 改正案が特別永住者に限定しているのは、その対象である在日同胞は、日本国籍取得によって取り込み、日本の中で年々増えるニューカマーについては継続して権利を与えず、差別しつづけるというものだ。また、そうなれば当然、国籍を取得できるにもかかわらず、それをしない外国籍の特別永住者に対しても同じように、差別されることを覚悟しろということにもなる。

 さらに、今回の議論の過程で、特別永住という法的地位に関しても検討していくべきとの声もあり、法案が通れば、これまでの権利闘争でようやく得た法的保障までも大きく後退させられる恐れすらある。

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  最近、「帰化」を「国籍取得」と表記していることがあるが、政策上何が変わるのか。

  これまで日本の国籍法による「帰化」制度そのものが反人権的と言われてきた。

 「帰化」をするには、5年以上日本で居住し、善良な市民である、生計面で独立しているなど、一定の条件を満たしているだけでなく、日本人との交友関係があるかなど、日本人化の度合いを徹底的に計られ審査された後、法務大臣の裁量にゆだね許可を得る。今回の改正案では、こうした手続きだけを簡素化し、特別永住者が簡単に国籍を取得できるようにしている。

 一見、反人権的な面を改善したかのような印象を与えるがそうではなく、こうした安易な国籍取得制度によって、民族心が希薄な3、4世を一気に帰化の道に走らせ、同化しようというものだ。

 若い世代には、国籍にこだわるのは、世界的な流れに逆行しているという考え方をする向きもある。しかし、日本でいう国籍の取得は、多民族社会を目指し異文化を認めようとする発想から出たものではない。他の民族を同化しようというもので、まさに植民地統治の発想そのものだ。よって、欧米などとは異なり、国籍を持つという意味が違う。

 もともと「帰化」という言葉には、君主の徳に従い、敬うという意味があり、「国籍取得」という言葉に変えるべきだと批判されてきた。そうした批判をかわすため、「国籍取得」という言葉を最近つかっているが、改正案の中でも「帰化を許可」とあり、巧妙に意図を隠そうとしているが政策の意図、その精神はなんら変わらない。

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  改正案を国際社会の潮流に沿ったもので、人権の見地から、反対できないとする人もいるが。

  改正案が、開かれた議論の中で国籍について考えていこうという試みからでたものでないことは明らかだ。日本は人種差別撤廃条約や難民条約など、国際条約を批准している。人権を掲げるならば、そうした国際条約にそって、外国籍住民に対する権利保障や差別解消に努めることもできるはずだが、そうした取り組みすらしていないのが今の日本の現状である。

 その最たるものが民族性を保持するための民族教育を認めていないことだ。

 人権や権利を保障するものだというならば、日本で在日朝鮮人として堂々と生きることができる制度的保障をすべきだ。そのためには、民族教育の保障が不可欠だ。そして、在日同胞に対し、植民地支配にさかのぼって謝罪し、無年金状態の在日同胞1世への制度的保障はもちろん、50年以上も放置している朝鮮と国交正常化し、朝鮮の国籍法を認めることが先だ。

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