春・夏・秋・冬 |
高校の夏休み、大阪・生野区かいわいの日本学校に通う朝鮮生徒にウリマルなどを教える夏期学校の開講準備のため生徒の家を訪問したときのことである
▼その家のハルモニが私たち3人に向かって、「ホンジョ オッソゲ」と言った。「ホンジョ…=1人だけ上がってこい」と思った私が部屋に上がろうとすると、「アイゴ、サトゥリ(方言)もわからへんのか」としかられた。済州島の方言で「ホンジョ」は「早く」、「オッソゲ」は「来い」という意味で、3人とも早く上がれと言いたかったのだ ▼部屋に上がると、ハルモニはいきなり「お前ら、サ・サム(4・3)のこと知っているか」と聞いてきた。ろくに勉強もせず遊びほうけていた私たち。「それ、誰の誕生日ですか」と聞き返すと、ハルモニは今度、「アイゴ」を連発した ▼「サ・サム」とは、解放後の48年4月3日、済州島で起こった民衆の武装蜂起のことである。軍・警察の虐殺によって、3万から6万人が死んだともいわれている。ハルモニから「サ・サム」という言葉を初めて聞いた筆者は、大学に入っていろんな文献を読み事件の詳細を知ることができた ▼53回目の「サ・サム」を迎え、亡くなったハルモニをしばし思い浮かべた。ハルモニが私たちに見せてくれた本の中にこんな歌がある。「統一 夢にさえみる名よ/ああ、恋人の如くに来れ/街の隅々に/はたはたと旗のひるがえる/4月のように 4月のように/汝は来れ」 ▼民族の「乳房」で育ったはらからたちは、今日もまた、こう声高くうたいつづけている。(舜) |