手記「ウリハッキョに入れることが・・・」―金秀香

子供に「アッパ」「オンマ」と呼ばれたい


 埼玉県鶴ヶ島市在住の主婦、金秀香さん(女性同盟川越分会)が、長女を埼玉朝鮮初中級学校に入学させようと決心した時の心の葛藤をつづった手記「ウリハッキョに入れることが…」を総聯西部支部や学校に寄せた。その内容を紹介する。(文責、見出しは編集部)

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 この春、上の娘・鈴奈が小学1年生になります。入学するのは、埼玉朝鮮初中級学校です。

 しかし、こうなるまで、たくさん悩みました。

 私は…というか、夫も私も、朝鮮学校という考えはまったくありませんでした。近所の小学校にお友達と一緒に通えれば、それで良かったのです。

 女性同盟の支部にもまったく顔を出したこともありませんでしたし、朝鮮人との付き合いというものも全然ありませんでした。子供も日本学校に入れて、そのうち日本に帰化してもいいな、なんて思ったこともありました。

 しかし、ある時、夫の弟と話を交わした時、彼は当然のことのように、自分の子供は朝鮮学校に入れると言うのです。

 なんだか、その時、妙な気分になりました。

 それから私は、朝鮮学校高級部の時の友人や、いろんな人に相談しました。子供のいる友人はほとんど皆、朝鮮学校に入れるという意見でした。

 私は、小学校は日本学校でしたが、中学からは朝鮮学校に編入して、民族教育を受けました。夫は初級部からずっと朝鮮学校です。

 自分の子供も朝鮮学校に入れることが、自然なことなのだろうか…。

 2人で毎日毎日、話し合い、気持ちも少しずつ変わってきました。娘が朝鮮語でしゃべる姿を思い浮かべると、やっぱりうれしい気持ちになりました。

 私には、子供を通じてできた日本のお母さんの友達が何人かいますが、なんとなく1歩置いて付き合っているような気がします。

 そう考えると、やっぱり朝鮮人のオモニ(お母さん)の友達がほしいという気持ちになってきて、子供にアッパ(お父さん)、オンマ(お母さん)と呼ばれたいと思うようになってきました。

 朝鮮人なのだから、朝鮮学校に入れるのが当然のことのように思えてきて、夫に気持ちを打ち明けたところ、とてもよく理解してくれ、夫もやっぱり朝鮮学校に入れたいと言ってくれました。

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 2人の意見が一致したのは良いのですが、ほかにもいくつか問題がありました。

 まずは、通学の問題です。わが家は川越よりさらに3駅奥の鶴ヶ島という所にあります。鶴ヶ島の駅から家まではバスに乗らなくてはいけません。この遠い道程を、たった6歳の子にどのように通わせるのか?!

 とりあえず朝は、私か夫が川越まで車で連れて行けば、駅に高学年の子が何人かいるのでお願いできます。

 問題は帰り。下に幼稚園に通っている娘がいるので、私は時間的に少し難しく、夫も仕事があるので無理です。

 そんな時、シオモニ(姑)が毎日、大宮まで迎えに行ってくれると言ってくれたのです。

 姑は仕事もしてますし、とてもお願いできないと思っていたのですが、仕事も辞め、孫のために協力してくれるというので甘えることにしました。感謝の気持ちでいっぱいです。

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 通学の問題は解決したのですが、問題はまだありました。

 周りの人にどう言うかということでした。大したことじゃないと言う人もいるかと思いますが、私にとっては本当に大問題でした。

 幼稚園には通名で通わせましたし、自分で言うのもなんですが、顔も全然、朝鮮人っぽくありません。お付き合いさせてもらっているお母さんたちもまったく気付いていなかったし、今まで言う必要もなかったので、日本人のふりをして付き合ってきました。

 告白した途端にそっけなくされたり、今までと違う付き合い方をされたらどうしよう、などなど、考えれば考えるほど言いづらくなっていきました。

 しかし、とくにきっかけはないのですが、なるようになれ!という気持ちに少しずつなり始め、幼稚園バスの停留所が一緒のお母さんに思い切って言いました。 「実は、南小に行かないんだ」「えっ、引っ越すの?」「実は…」。こんな感じで切り出し、うちは在日朝鮮人だということ、朝鮮学校に行かせようと思っていること、そのほか、いろいろ話しました。

 すると、意外なほど普通に、「そうなんだ。でも今、在日の人ってたくさんいるよね」と言ってくれ、朝鮮学校のことも知っていました。

 ほかにも何人かのお母さんに言いましたら、皆さん理解があって、嫌な表情をしたり、言った後に態度を変えたり、そんなことは1つもありませんでした。

 そんなこんなで最近ようやく落ち着いてきました。

 4月からはきっと心配事もたくさん増えるだろうが、朝鮮学校に入れなかったら、のちのち後悔すると思うんです。

 2月6日に埼玉初中で、新入生を対象とした1日入学がありました。学校で楽しく遊んでいる姿を見ると、この選択は間違っていなかったと確信できました。

 いろいろ問題があったけど、いろんな人のおかげで、朝鮮学校に通えるようになったことを、とてもうれしく思っています。

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