グローバル新風

ローカル通貨考


 「犬の散歩20分:50ガル」「ジャガイモ1キロ:20ガル」「ごみ処理手伝い:65ガル」。北海道苫小牧市で利用される「地域通貨・ガル」で取り引きされた相場の一例だ。

 「地域通貨」とは、円やドルなどの国が発行する「法定通貨」とは違い、コミュニティが独自に発行する金券で、ローカルなエリアでしか利用できない。トロントの「トロントダラー」、バーミンガムの「ハーツ」、仁川の「ナヌム」など、今や世界の約2000地域で導入されるほどだが、その背景は人間臭いものがある。

 「地域通貨」とは文字通り地域限定で使われる金券だが、「地域通貨」の存在は、地域内でのモノやサービスがより多く取り引きされる事になる。それは地域住民間の接触機会を増加することにつながり、人々の触れ合い加減によっては都市化の過程で失われる地域の共同体意識を目覚めさせる効果を持ち得る。

 例えば「子守り:30ガル」や「老人の肩を叩いてあげる:50ナヌム」など、地域ならではの人間臭い取り引きがうまく循環するローカル市場を組織することで、プラダやシャネルは買えないが、人々の「絆」や「連帯感」は買える市場になるかもしれない。前出の苫小牧の「ガル」も「人がつながる」の「がる」をカタカナにしたものだ。

 「地域通貨」の多くは、NPOが草の根で運営しており、市場では成り立ちにくい価値を支えようという精神がそこには見える。グローバリゼーションの進展によって、社会と経済が大きな影響を受ける昨今において、「地域通貨」というツールは有効なリスクヘッジ手段として期待されている。(李達英=朝・日輸出入商社)

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