春・夏・秋・冬

 「歴史の叙述は史実に縛られる」とは、日本歴史の検証に情熱を傾ける網野善彦氏の言葉である。同氏の手にかかると、法制化された国旗、国歌(「日の丸」「君が代」)通史や、「神風が吹いた元冦」神話が一瞬の内に崩れ去ってしまう。史実を史実として教えられてこなかった日本社会。歴史観がゆがむはずである

▼その集大成ともいえるのが、本紙でもたびたび明らかにしてきた「独善的自賛の日本歴史物語」(永原慶二・一橋大学名誉教授)を根底にした「つくる会」の歴史教科書である。近現代史のわい曲のひどさには、腹わたが煮えくり返るほどの怒りを覚える。さらに内容全般を見ると、もうプロパガンダのオンパレード。なぜこんな子供だましの、幼稚な記述が可能なのかと、その思考回路を解剖してみたくなるほどのひどさである

▼問題の教科書は修正が加えられ、どうやら検定は通りそうだといわれているが、歴史の根本からわい曲されているのだから、修正が加えられたからといって一件落着とはならない。中国の朱鎔基首相が修正しても駄目だ、と教科書そのものの存在を問題にしたが同感だ

▼植民地時代、王陵の盗掘に励んだ朝鮮総督・寺内正毅は、陵内の金銀財宝を運び出すために子供たちを使ったという。そして作業が終わると、盗掘の事実を隠ぺいするために子供たちを閉じ込めたまま陵を閉じた、という。子供たちが助からなかったのはいうまでもない

▼南朝鮮で広く語られている話だが、蛮行をほしいままにした日本の支配者。過去は絶対に清算させなければならない。(彦)

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