こども昔話

いばりんぼうの虎

李慶子


 おばばは、くやしくってたまらない。

 いばりんぼうの虎がまい晩やってきて、畑の大根、ばさばさ食っちまう。

 卵をたんと産んで、おばばを喜ばせためんどりも、働きものの牛も、冬をまたずに虎の腹におさまった。

 いばりんぼうの虎は、きょうも畑のまんなかで長いキセルをくわえながら「うまいもんはないかぁ」と、目んたまぎろつかせ、つめをといでいた。

 おばばがおんおん泣いてると、納屋でかくれていたむしろとろばが、よっこらよっこら近づいて、おばばにささやいた。

 泣いたって、しょうがない。

 力合わせて、虎たいじ。

 おばばとむしろとろばは、あれやこれや相談した。

 ふむふむ、なぁるほど。

 そりゃいい、こりゃいい。

 おばばは、さっそく畑へとんでった。

  「虎どんや、あずきがゆ食わすで、あしたの晩、うちさ、きておくれ」

  「あずきがゆかぁ」

 いばりんぼうの虎は、舌なめずりをすると、尻尾をゆすってかえっていった。

 あくる日、おばばはおおいそがし。

 火ばちにがんがん火おこし、灰をかけた。

 水がめには、どっさりとうがらし粉いれ、てぬぐいに針をぶすぶすつきさした。

 庭には牛のくそ。ぺたんこ、ぺたんこぬりつけた。

 夜、いばりんぼうの虎がやってきた。

  「おばば、寒いから火おこせ」

  「よしよし、こうか?」

  ブハブハァー

 おもいきりふいたもんで、火の粉やら灰やら、虎の目に入った。

  「おばば、いたくってしょうがない」

  「なら、水であらうがいいよ」

 いばりんぼうの虎は、あわてて水がめに顔をつけた。けれども、とうがらし粉まぜてあったから、たまらない。

  「さっきより、もっといたいぞ」

  「なら、これでおふきよ」

 おばばにもらったてぬぐいでシャラシャラふくと、

  「いたたたたた…」

 ぶすぶすばちばち、針が目をさした。

  「ほれ、あずきがゆだ」

 虎はいばりんぼうでくいしんぼう。いたさをこらえてかゆをすすった。と、かゆの、なんと熱いこと。

  「あっちちちち…」

 とびあがって庭にでた。

 庭には牛のくそ。

 ふんずけて、ふんずけて。つるつる、つるり。ごろろん、ごろり。

 たおれた虎をむしろがくるりとまいて、ろばの背にひょいとのせた。ろばはたったか走って、虎をほいさと海にすてた。

 それから、おばばとむしろとろばは、なかよくくらしたよ。

 畑にも大根がいっぱい。

◇               ◇

 民族説話の先駆けとなった壇君神話に熊と虎が現れているのを見ても分かるように、朝鮮民族と虎は独自の文化的性格を育んできた。虎説話では報恩型、野獣型、愚直型、変身型、情義型、中性型があり「いばりんぼうの虎」は愚直型だ。力は強いが愚かな存在としてからかわれる。高麗時代からは権力のシンボルとしてみなされ、支配階級に対する強力な批判を含んだ虎説話が数多く生まれた。(第3週の水曜日に掲載  リ・ギョンジャ、児童文学作家)

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