関東大震災朝鮮人虐殺
日弁連の聞き取り調査

目撃者の文さん「父親の知人殺された」
歴史家の琴さん「国家犯罪、民族犯罪」


 関東大震災(1923年9月1日)時の朝鮮人虐殺を目撃した横浜市在住の文戌仙さん(92)が1999年11月に日本政府による事件の真相究明と謝罪を求め、日本弁護士連合会(日弁連)に人権救済申立を行ったことと関連し、昨年11月に設置された日弁連の事件委員会(梓澤和幸委員長)が関係者に聞き取り調査を続けている。現在、事件委員会は月2回のペースで聞き取りを行っているが、2月13日には、目撃者の文さん、23日には歴史家の琴秉洞氏が聞き取りに応じた。

 文さんは、92歳の高齢にも関わらず、四女の尹峰雪さんと共に横浜から東京・霞ヶ関の日弁連会館へ赴き、40分間証言した。

 13歳の時に来日した文さんは震災当時、東京・大井町の長屋に住みながら、紡績女工として働いていた。

 文さんの証言によると、震災後、「朝鮮人が井戸に毒を投げた」などと流言が飛び交い、大勢の日本人が日本刀やとび口を持って「朝鮮人を皆殺しにする」と文さんの所にもやってきた。文さんは、日本人の大家にかくまわれ、殺されずに済んだ。しかし、父親の知人は虐殺された。父の同郷人だったその知人は、暴挙をふるう日本人に「抗議に行く」と出かけたが、「その数分後に日本人の一団が父の知人の首に竹やりのようなものを突き刺し、担ぎながら私たちの前を通っていった」という。

 証言を終えた文さんは事件委の弁護士らに、日本政府の責任を明らかにして欲しい、と訴えた。文さんの証言を裏付ける資料は、歴史家の山田昭次氏が提示した。

 一方、琴秉洞氏は、「朝鮮人虐殺事件の本質は国家犯罪、民族犯罪だ」と強調。国家犯罪と言える根拠について、@国家権力の中枢にあった内務省が戒厳令発布を「朝鮮人暴動」の流言と結びつけたA「朝鮮人暴動」の流言を政府が伝播させたB朝鮮人虐殺を軍隊が先導した―などと指摘し、関連資料を提出した。

 琴氏は、「事件から70年以上経った現在まで、この問題に関して日本政府が謝罪したこともなければ、国会で議論されたこともない。司法の一角である日弁連が調査を始めた意義は大きい」と話す。虐殺事件は石原慎太郎東京都知事の「三国人発言」に象徴される外国人排斥、軍国主義化の動きにつながっているだけに、「日本政府の法的責任を明確に示す調査結果を期待したい」と語っていた。

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